4635ライター、翻訳家、比較文学研究者、1児の母。長年のフランス暮らし、モロッコ通い、3年間の上海暮らしなどを経て、現在、鹿児島大学教育センター講師。著書に『クスクスの謎』(平凡社)、『パリで出会ったエスニック料理』(木楽舎)などがある。ほか、マリリン・モンローも愛した香水、シャネルバー」(インド原産のイネ科の多年生草本)や「スベリヒユ」(日本の路地などでも見かける雑草)などが配合されている。このルーハフザ、実は、ユナニ医学に基づいた薬草飲料なのだ。 イスラム文化圏で行われてきた伝統医学であるユナニ医学は、中医学とアーユルヴェーダと並ぶ世界3大伝統医学のひとつで、パキスタンでは今でも生活や治療に取り入れられている。イスラム教と結びつくことで、聖典コーランやハディース(注釈書)からの医学的・宗教的な知識と一体化し、スピリチュアルな側面の強いものとなっているが、基本的には体質に合わせて大地からのパワーを最大限に活用しようとするものだ。たとえば、ルーハフザに配合されたベチバーは、神経を鎮静させ、ストレスや感情の乱れに効果的だという。一方、スベリヒユは、利尿・消炎・解毒といった効果のほか、オメガ3を多く含む高栄養雑草なのだとか。 ロハちゃんのお宅の台所に置かれていた大理石製の乳鉢と乳棒は、こうしたパキスタンの人々のホリスティックな健康志向を物語っている。本来、スパイスやハーブの粉砕や調合のために用いられる乳鉢は、赤ちゃんのいる家庭では、あらゆる固形物を潰して食べやすくするための便利な道具としても活躍している。number34Photos © Simon Penrose 1. 大きな目が可愛い女の子、ロハちゃん。 2. おじやにそっくり、「キチュリー」。 3. 台所で「ロティ」を作るおばあちゃんの手。 4. パキスタンの名産品、大理石で作られた乳鉢と乳棒。 5. ルーハフザ。水割りと牛乳割り。元祖は、1906年に作られたハムダード薬局のもの。類似商品が多いのでご注意を。 6. お婆ちゃんお手製、焼きたてロティ。43No.5のベースノートとして使用されている「ベチPakistan
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