SIGNATURE2017年03月号
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続きを経て、建築家たちはさまざまな計画を実現できる千載一遇の機会をここに得たのだ。ル・コルビュジエの元には復興建設大臣とマルセイユ市長から相次いで集合住宅設計の依頼が届いた。手ぐすね引いて待っていた建築家はそこで、かねてより温めていた垂直に立ち上がる都市としての『ユニテ・ダビタシオン(住居単位)』というアイデアを提出した。 これは商店や幼稚園などの都市の施設を集合住宅の内部に組み込んだ画期的な計画であった。各世帯は立体的なメゾネット型式の住戸ユニットがパターンで組み合わされる。カラフルな建物全体は、野性的な姿に設備配管等も抱き込んだ逆三角形のコンクリートの柱により支えられ、その足下には「ピロティ」と呼ばれる屋外空間が、周囲の景観を分断することなく広がる。体育館、保育園、野外劇場、水遊び場、ランニングトラックなどを配した屋上庭園は、青いマルセイユの空に持ち上げられた。随所に見られるオリジナルの照明、キッチン、家具、階段、建具などはジャン・プルーヴェや、かつてのスタッフであったペリアンらとの力強い協働によるものだ。 1952年にようやく完成したこの建築の、全体から細部に至るまで切れ目なく続くデザインの密度は、関わった人々がこの実験的なプロジェクトへとつぎ込んだ熱量を現在もなお力強く伝えてくれる。MarseilleParisラ・フリッシュ・ラ・ベル・ド・メタバコ工場を改修したアート村『ラ・フリッシュ(荒地)』には、スケートボードパーク、市民農園、小学校、アーティストのアトリエ、展示スペース、映画館、ラジオ局、ホールなどが併設。現在もアーティストと市民のワークショップにより公営団地が加えられつつある。www.lafriche.org49マルセイユ・プロヴァンス 2013(MP2013)の詳細はこちら▶www.myprovence.fr/marseille-provence-2013ヴュー・ポー(旧港)英国の建築家、ノーマン・フォスター卿とランドスケープアーキテクトのミシェル・デヴィーニュとの恊働によるマルセイユの旧港再整備計画。巨大な鏡は人気スポットのひとつ。インターコンチネンタル マルセイユ ホテル デュー旧港近くに位置し、各観光スポットにアクセスが容易。客室の窓からマルセイユのランドマーク、ノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院が立つ丘が見渡せる。 www.intercontinental.com/MarseilleFRAC(PACA地域圏現代美術基金センター)各地域圏が主体となって現代美術の振興を支援するフランスの文化政策のひとつ。2013年に新設されたプロヴァンス=アルプ=コートダジュール現代美術基金センター。設計は隈研吾。 www.fracpaca.orgヴィラ・メディテラネ新装されたかつての地中海地域センター。ミラノの建築家、ステファノ・ボエリの設計。最上階の4階を「宙吊り」に張り出し、地下の3フロアは水面の下で、「空と海の間」を表現。www.villa-mediterranee.orgL'Architecture d'aujourd'huiマルセイユ現代建築スポット

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