ロワグロ・ファミリーと日本の出合い、それは1967年に遡る。ミッシェルの父・ピエールが初めて日本の地を踏んでからほぼ半世紀。ミッシェル・トロワグロは今、自身の名を冠した東京のレストラン『キュイジーヌ﹇s﹈ミッシェル・トロワグロ』で、日本との関わりを静かに振り返る。 1968年、最初の東京滞在を終えて『トロワグロ』のあるフランス・ロアンヌに戻ってきたピエール・トロワグロを待っていたのは、ミシュランガイド3つ星獲得という驚くべき快挙だった。やがて迎えた70年代、現代フランス料理はヌーヴェル・キュイジーヌ全盛期に突入する。 ジャン&ピエール・トロワグロ兄弟による料理「サーモンのオゼイユ風味」はヌーヴェル・キュイジーヌを象徴する料理として世界中のグルメの知るところとなった。サーモンを薄切りにすることにより火入れが浅くなり、しっとりとしたレアな食感を楽しめるこの料理、クラシックな白ワインソースに酸味の効いたオゼイユ(すかんぽ=春の野草の一つ)の葉をたっぷり加えることで、これまでのソースにはなかった軽快さを生み出した。まさに「伝統を生かし、新しいものを取り入れる」ミッシェルがジャンとピエールから受け継いだトロワグロ・ファミリーのエスプリである。 「好奇心旺盛な父は70〜80年代、日本から多くのインスピレーションを受けていました」。ミッシェルは続ける。「今でこそ柚子やわさびを使うフランス人シェフは大勢いますが、当時フランスではよい醤油が手にévolution=革新。入らず、父が日本から持ち帰って使うほど、トロワグロでは日本の食材を早くから料理に取り入れていました。中でも私にとって一番衝撃的だった日本の食材は、寿司屋のガリです。あの甘酸っぱいさわやかな味わいには、まさに私たちの求める酸味と軽快さがあったのです」。オゼイユしかり、トロワグロの料理にとって確かに酸味は重要なエレメントだ。ミッシェルは酸味を〝太陽の光〞にたとえ、「料理を明るく照らす一筋の光」と表現する。 さらにミッシェルが東京に通うようになって30年余り、今も来る度に新しい発見があると言う。「たとえば、桜の花の塩漬け。東京でシェフ・パティシエを務めるミケーレ・アッバテマルコがデザートに使っている求肥。ハマグリや金目鯛の素晴らしさに気づいたのも実は最近のことです」。それはまるで、恋人の知られざる側面をひとつずつ見出すような楽しさに似ているかもしれない。 東京のレストラン『キュイジーヌ﹇s﹈ミッシェル・トロワグロ』も2016年9月、開業から10年を迎えた。アート、建築、人との会話、歴史に関する書物、旅……料理以外から料理の想を得ることが多いというミッシェルにとって、伝統とモダンが共存する国際都市東京はますます刺激的で心地よい場所となりつつある。3年前からは共にロアンヌの厨房に立つ長男のセザール・トロワグロが、『トロワグロ』の4代目として来日する。かつてのミッシェルが父・ピエールと共に来日した時と同様に、セザールも父・ミッシェルの視線の先に日本を見つめてきた。ぎゅうひ そして2017年、トロワグロ・ファミリーは新しい歴史のページをめくった。『トロワグロ』の移転リニューアルである。 1930年創業の『トロワグロ』は、2月18日、ついに慣れ親しんだロアンヌの駅前広場を去り、6キロほど離れたウーシュの広大な敷地(約17ヘクタール)への移転を果たした。50人のスタッフ、3万本ものワインとともに。 母屋であるマノワール(城館)など歴史的な建造物はそのままに、近未来的な造作のレストランを増設した。カシの巨木を囲むように広がるガラス張りのホールは、まるで森の中で食事をしているかのような自然との一体感を見せる。果樹園には日本の桜や梅の木を植えて、いつか桜の花の塩漬けや梅干しを作りたいとミッシェルは目を輝かせる。 「私は大きな木のようにこの土地に根を張り、空に向けて枝を広げながら成長を続けたいと思いました。歴史を刻んできたロアンヌから遠く離れることは選択肢にありませんでした」。トロワグロ・ファミリーの未来を見据えた彼の新たなチャレンジは始まったばかりだ。新天地で日々刷新されるトロワグロの料理はこれまで以上の美味しさと夢に満ちているだろう。 うれしいことに、ウーシュへの『トロワグロ』の移転を記念して、新たなトロワグロの料理をいち早く東京で楽しめる機会がやってくる。軽やかな酸味のアクセントを伴ったアーティスティックな皿、日本の旬の食材を織り交ぜて、シンプルな緊張感をまとった皿を『キュイジーヌ﹇s﹈ミッシェル・トロワグロ』で心から堪能したい。14Campaign Information期間 : 2017年5月1日(月)~29日(月)会場 : 『キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ』 〈ダイナースクラブ会員限定特典〉ダイナースクラブカードでお支払いのお客様は、下記の特典をご利用いただけます。●コース優待料金のご提供 (優待料金:26,000円[一般料金 29,700円]/税・サービス料込)●ウェルカムグラスシャンパンプレゼント予約受付TEL:03-3348-1234(代表)*詳しくは78ページをご覧ください。東京都新宿区西新宿2-7-2 ハイアット リージェンシー 東京1階http://www.troisgros.jp/営業時間 12:00~13:30/18:00~20:30 定休日:火・水曜(祝日を除く)ミシュラン三つ星『トロワグロ』のメニューを期間限定で再現 新生『トロワグロ』スペシャルメニュー会員限定特別優待ト
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