SIGNATURE2017年04月号
12/80

 長いつき合いのグルメなゴルフ友達から、「美味い焼き鳥屋さんが北千住にあるんだけど、ゴルフの帰りに寄らない?」と誘われて、断れるはずがない。千葉県のゴルフ場でプレーをし、わくわくしながら北千住へと向かう。駅前からほどよく離れた路地を歩いていくと、ちょっとこじゃれた門構えの店を発見。それだけでなんだかうれしい。 店に入るとまず目に飛び込んでくるのが、大きなL字のカウンター。広々としたオープンキッチンは、焼き鳥屋とは思えないほどお洒落だ。この日はご主人・野島康之さんの目の前の特等席に陣取った。 メニューを見るとワインにかなり力を入れている。その豊富な品揃えは、野島さんご自身で現地のワイナリーにまで足を運んだ結果と聞き、納得だ。もちろん主役の焼き鳥にも最上級のこだわりがある。ていねいに火をおこした上質な備長炭で焼き上げるのは、茨城の奥久慈しゃも。自然の中で飼育されているからか、脂が少なく、どの部位もしっかりとした歯ごたえがあるのが特徴だ。卵の黄身が添えられるつくねは、しっとりと軟らかい。ほどよい甘みのタレと絡めると、もう幸せ感でいっぱいだ。稀少部位のソリはジューシーだし、砂肝は表面はカリカリだが中身は軟らかく、噛むと肉汁がジューッと滲み出してくる。 驚いたのはレバーだ。実は僕はレバーが苦手なのだが、あまりにも勧められるので思い切って一口いただく。レバーの質がいいのだろう――食べられる! そして美味しい! 独特の臭みも食感もスムーズで、レバーに対するこれまでの概念が変わってしまった。 この店で忘れてはいけないものが、もう一つ。それは、強烈な印象を残す「川越豆腐」だ。塩、胡椒、オリーブオイルでいただくのだが、濃厚な豆乳からくる旨みの凝縮感がものすごい。 まだまだ書ききれないが、あとは実際にお店に足を運んでからのお楽しみだ。実は、ご主人はワイン派だと勝手に思い込んでいるが、奥様に選んでもらう日本酒も秀逸だ。僕の次回は、日本酒の予定だ。食感で楽しむ奥久慈しゃもバードコートコースはおまかせで4,000円(軍鶏のスープ、前菜2品、自家製レバーのパテ、串焼き6本)と6,000円(軍鶏のスープ、前菜3品、軍鶏の梅わさび和え、自家製レバーのパテ、串焼き6本、軍鶏の山椒焼き、軍鶏の親子丼)の2種類がある(アラカルトもあり。金・土曜はコースのみ)。コース以外にぜひ試したい「川越豆腐」は650円。価格はすべて税抜です。住所:東京都足立区千住3-68 鹿明ビル1F電話:03-3881-8818営業時間:17:30~22:30(L.O.22:00)定休日:日・月曜ご主人NumberPhotographs by Masahiro Okamura(Crossover) Text by Tomoyasu ShitayaYasuyuki Nojima16野島康之118今月の一皿 

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る