CSignature特別展「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」じょうちょう定朝。その流れを汲み、南都仏所を率いた康慶の工房に所属していたのが快慶だ。金色に輝くとされる仏の身体を表現するのに、古代以来の金箔ではなく、金泥塗りを用いて、絵画と彫刻の境界を越えるような表現を試みたのは、快慶だけの特徴だ。像の左右対称性が強く、途中の修正も少ない制作のプロセスからは、計画的で真面目な性格が伝わってくる。また東大寺復興プロジェクトのリーダーを務めた傑僧・重源に深く帰依し、自らを「安阿弥陀仏」と号して、重源の理想を仏像として具現化するために尽くした。 康慶の実子・運慶は、その時々の注ちょうげん文に応じて大胆にスタイルを変えながら、他の誰も追随することのできない、個性的な「リアリティ」を持つ像をつくり出したが、その個性を様式として受け継げる者はついに現れなかった。一方の快慶は定朝スタイルに、宋の新しい様式などをわずかに加え、端正で優美な仏像のイメージを確立。特にその阿弥陀如来立像は、現代の仏具店などでも扱われる像の様式として、確実に受け継がれている。olumnText by Mari Hashimoto19会期 : 2017年4月8日(土)~6月4日(日)会場 : 奈良国立博物館 東・西新館(奈良市登大路町50)開館時間 : 9:30~17:00※金・土曜は19:00まで ※入館はいずれも閉館の30分前まで重要文化財 阿弥陀如来立像奈良・東大寺木造 金泥塗・截金 像高98.7㎝鎌倉時代 建仁3年(1203年) 快慶作休館日 : 月曜(ただし5月1日は開館)お問い合わせ 050-5542-8600(ハローダイヤル)公式ウェブサイト http://www.ytv.co.jp/kaikei/はしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。 永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都 で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 快慶の阿弥陀如来像はごくわずかな違いながら、年代によって襟の形が3段階で変化することが知られている。来迎印を結んだ右手の袖口のあたりを見比べると、左の東大寺像のほうがやや表現が複雑化しているのが、わかるだろうか。重要文化財 阿弥陀如来立像京都・遣迎院木造 金泥塗・截金 像高98.9㎝鎌倉時代 建久5年(1194年)頃 快慶作※4月11日~6月4日展示日本美術の冒険 第33回文・橋本麻里 運慶・快慶、と常にセットで語られる、仏教彫刻史上もっとも有名な二人の仏師。ともに慶派に属することもあり、あたかもユニットで活躍していたかのように思われているかもしれないが、実態はだいぶ違う。2017年は、春に奈良で快慶、秋に東京で運慶を、それぞれ単独で取り上げた展覧会が開催される、稀有な年。かの「大運慶」とは異なる才能、異なる技倆を持って鎌倉時代を駆け抜けた快慶の個性を、あらためて知ってほしい。 平安時代中期に、平等院鳳凰堂の本尊・阿弥陀如来坐像を完成させ、和様の仏像の規範を完成させた、仏師・2Art仏の規範を追い求めた謎の仏師・快慶
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