央競馬は、3月の高松宮記念で春中のGIシーズンの幕が開き、6月末の宝塚記念まで様々なカテゴリーで熱戦が繰り広げられます。 特にクラシック競走は、大きな楽しみ。クラシック競走とは、競馬発祥の地・イギリスに範をとる、サラブレッドが3歳の時にしか出走することのできない大レースのことです。日本では、皐月賞、日本ダービー、菊花賞、そして牝馬による桜花賞、オークスが五大クラシックと呼ばれ、菊花賞(秋開催)を除く4レースが春に行われます。 今年、牝馬の主役はソウルスターリング。デビューから鮮やかな4連勝を飾って、第一冠の桜花賞に臨みます。今年の桜花賞は4月9日で、この記事が掲載される頃には結果が出ていますが、無敗の桜の女王が誕生していることを信じて書いています。 ソウルスターリングは、(有)社台レースホースの所属馬で、父は英国2000ギニーなどGI10勝を含め14戦全勝のフランケル。母・スタセリタは、フランスオ文・鈴木淑子(競馬パーソナリティ) 写真・原 智幸ークスはじめ仏米でGI6勝。父母合わせて16冠という超良血馬です。昨年は阪神ジュベナイルフィリーズを勝ち、フランケル産駒として父に世界で最初のGI勝利をプレゼント。母譲りの漆黒の馬体はオーラを放ち、気品を漂わせ、うっとりする美しさです。 管理されるのは、日本を代表するホースマン・藤沢和雄調教師。 藤沢調教師はフランケルの父・ガリレオやその父・サドラーズウェルズなど欧州系名馬の産駒を手がけた経験から、馬場が異なる日本には不向きと感じ心配していらしたようです。しかし初めてソウルスターリングを見たとき、素軽くて素晴らしい動きにびっくりし、震え上がったそうです。「能力がすごく高い。厩舎ではおとなしくて女の子らしい馬ですが、競馬では頑張りますね」。レース後、ソウルスターリングが検量室前に引き揚げてくるとハグをしてねぎらう藤沢調教師。名伯楽の心を躍らせるソウルスターリングは、一戦ごとに躍動感に磨きがかかっているように感じます。 これまで、藤沢調教師はその手腕で、何頭ものGIホースを育て上げられています。 社台レースホース所属馬でいえば、1996年の天皇賞馬バブルガムフェロー。この年、前年の2歳王者として皐月賞に向かうはずでしたが、本番の1週間前に骨折。春のクラシック出走は叶いませんでした。しかし秋に復帰すると、菊花賞ではなく、距離適性の高い天皇賞を選択。そしてみごとに優勝。3歳馬による天皇賞制覇は59年ぶり、戦後初の偉業達成でした。 また牝馬ではダンスインザムードが、2004年の桜花賞、06年のヴィクトリアマイルを制しGIを2勝。06年はアメリカに遠征し重賞に優勝と活躍しました。 早くから海外に目を向け、日本の競馬の発展に大きな足跡を刻み続ける国際派の第一人者・藤沢調教師の手によって、ソウルスターリングがこれからどのように羽ばたいていくのか、ほんとうに楽しみでなりません。Text by Yoshiko Suzuki Photographs by Tomoyuki Hara(FORSEER photo)vol.75デビュー戦の2016年2歳新馬戦から、アイビーS、阪神ジュベナイルF(GⅠ)、今年3月のチューリップ賞と4戦全勝のソウルスターリング。いずれも鞍上はクリストフ・ルメール騎手。右:阪神ジュベナイルFの勝利の後、喜びを分かち合うルメール騎手(右)と藤沢調教師(左)。左:同じく阪神ジュベナイルFでのソウルスターリング。レースの向こう側のストーリー競馬を深く知るための、06名調教師と名馬で知る、日本競馬の過去と未来
元のページ ../index.html#57