※さまざまな文字が当てられる「ようへん」だが、基本的には光線の加減によって輝きが変化を見せる斑文のある茶碗のこと。同時に、窯の中での変化=「窯変」現象によって生まれることも意味する。本作は徳川家康から水戸徳川家へ伝わり、大正7年の売り立てで藤田家が入手した。CSignature日本美術の冒険 第34回文・橋本麻里 海外旅行の際には、多くの人がその国を代表する美術館・博物館に足を運ぶ。ニューヨークならメトロポリタン・ミュージアムやMoMA、パリならルーブル美術館だし、ロンドンなら大英博物館は外せない。特別展はさておいても、「常設(コレクション)展示」を観るだけで、十分楽しむことができるからだ。この連載ではその時々の特別展を紹介しているわけだが、それぞれの美術館の根本的な価値は、ひとえにコレクションと常設展示にかかっている。 その実力のほどをこれでもかと見せつけるのが、藤田美術館の「ザ・コレクション」展だ。23会期 : 2017年6月11日(日)まで会場 : 藤田美術館(大阪市都島区網島町10-32)開館時間 : 10:00~16:30(最終入場時間 16:00)※会期中展示替えあり休館日 : 月曜お問い合わせ 06-6351-0582公式ウェブサイト http://fujita-museum.or.jpはしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。 永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 国宝《曜変天目茶碗》南宋時代 12~13世紀藤田美術館蔵「ザ・コレクション」 長州藩の出身で、明治維新後は藤田財閥を形成、関西財界の重鎮として活躍した藤田傳三郎が収集した東洋美術がコレクションの中心であり、世界に3碗しか現存しない《曜変天目茶碗》※を筆頭に9件の国宝を所蔵する、西日本の私立美術館の雄。またこの3月にクリスティーズ・ニューヨークで開催された同館のコレクションセールが、東洋美術のオークションとして落札総額の新記録を樹立し、世界中の耳目を集めたことは記憶に新しい。 「ザ・コレクション」と銘打った今展には、《曜変天目茶碗》が通期で出品されるほか、後期(現在展覧中、6月11日まごうで)は、《紫式部日記絵詞》《玄奘三蔵絵》《仏功徳蒔絵経箱》などの国宝作品も展示される。その他にも《交趾大亀香合》などの陶磁、利休作の竹花入「よなが」や大井戸茶碗「蓬莱」など、藤田傳三郎が熱中した茶道具の名品も、多数見ることができる。今展終了後、藤田美術館は展示環境の充実のため、施設の全面的な建て替えを行う。蔵を利用した旧展示室で作品を観ることができる最後の機会を、どうぞお見逃しなく。こうちおおがめこうolumnText by Mari Hashimoto2名品中の名品を選りすぐった、藤田美術館所蔵コレクションArt
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