写真・大志摩徹 文・松尾千鶴子 アルゼンチンタンゴの演奏に使われる楽器、バンドネオンの蛇腹から想を得て、昨シーズン発表されたポール・スミスのコンサティーナ・バッグ。人気を博したこのラインナップに、今シーズンのニューカラーが登場した。外はレザーの質感が堪能できるミニマルなデザイン、しかしマチはプリーツ状に折り畳まれ、内にはマルチカラーのストライプが潜んでいる。 素材は柔らかくしなやかなイタリア製カーフ、製作はスペインの熟練した職人の手に委ねられた。マチに加えられた手作業によるプリーツ加工は精巧を極め、スペインの職人たちの高度な技術力がうかがえる。マチのプリーツは4つの山と谷で構成されるが、各サイドで色を変え、表のメインカラーと合わせて7色を使用。それぞれの山部分のエッジはすべてロウ留めされていて、縫製とロウ留めの工程ではバッグ4つ分と同じ作業を行ったことになる。 さて、これだけの工程を経て完成したバッグの姿はというと、シンプルそのもの。しかしバッグの中身が増える度にプリーツは徐々に開き、ブランドを象徴するマルチカラー・ストライプが鮮やかになるのだ。Paul SmithInformationJune 2017 No.60265クラッチバッグにおいて、ある程度のマチの幅は機能的に不可欠なもの。これをデザインに昇華したところがこのバッグの優れた点である。脇に持ったときに感じるスムースレザーのしなやかさや、ていねいな仕上げによるプリーツのエッジ部分のしっとりとした滑らかさがたまらない。右:ブラック×マルチカラー、左:ネイビー×マルチカラー 各H26×W35×D2~9㎝、74,000円(税抜)ポール・スミス リミテッド電話03-3478-5600{} Photograph by Toru OshimaText by Chizuko MatsuoInformation For Enjoying Life Special熟練の技で魅せる3Dマルチカラー・ストライプ
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