CSignature日本美術の冒険 第35回文・橋本麻里休館日 : 月曜(ただし7月17日は開館し、翌日休館)お問い合わせ 03-3941-0850olumnText by Mari Hashimoto (前期 : 6月17日~7月30日、後期 : 8月1日~9月10日)※前・後期で大幅な展示替えを行います※夏季展期間中は17:00まで延長開館 『永青文庫』の創立者、細川家16代の細川護立侯爵は、歴代の文物以外に、近世の禅画や刀剣、中国陶磁など、自身の審美眼に従って多くの文物を蒐集しただけでなく、文化支援を積極的に行ったことでも知られる。 有名なのは、東京帝国大学が行った漢代の楽浪遺跡の発掘に対する支援だが、横山大観、菱田春草、下村観山らの日本画家が岡倉天心に従って東京美術学校を辞め、茨城県の五浦で極貧の研究生活を送っていた頃、展覧会で作品を買い求めて以来、親しく交流を重ねた。こうして蓄積された作品はいまや、日本有数の近代絵画コレクションへと育っている。もりたついづら 病弱だった少年時代、絵画に慰められることの多かった護立が、学習院で特に親しくつき合っていた志賀直哉、武者小路実篤、有島(武郎・生馬)兄弟、児島喜久雄らには、ヨーロッパの印象派や新しい文学運動に憧れる風潮があった。こうした友人たちの影響を受け、護立は近代絵画にも目を開かれていったらしい。 不仲を噂されていた大観と観山に、そうでないなら合作しろと護立が迫り、仕方なく二人で『寒山拾得』を描いた。あるいは細川家の別荘に招かれた大観が、大きな杉戸にフクロウを描いたのを契機に、訪れる画家たちが毎回新しい鳥を描き足した。護立の孫に当たる18代目の現当主(細川護煕)は、その杉戸の前で卓球に熱中し、何度も体当たりしたと語る。こうした逸話は、画家たちとパトロンの周辺に数限りなく残されてきた。 「細川護立と近代の画家たち─横山大観から梅原龍三郎まで─」では、上記のような画家と護立との交流から生まれた作品や、親交の深さが文面に表れた書簡などを展示。ただ財力に任せて「買い集める」のとは異なるあり方でコレクションが形づくられていく、そのプロセスも含めて紹介する。21会場 : 永青文庫(東京都文京区目白台1-1-1)開館時間 : 10:00~17:00(入館は16:30まで)細川護立と近代の画家たち̶横山大観から梅原龍三郎まで̶会期 : 2017年6月17日(土)~9月10日(日)公式ウェブサイト www.eiseibunko.comはしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。 永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 永青文庫の展示施設は、かつて細川家の家政所として作られた建物。六曲一双の屏風に描かれた平福百穂《豫譲》、同じく松岡映丘《室君》など、展示室の改装前まで、館外への貸し出し時にしか見ることのできなかった大型作品が、今回初めて永青文庫内で展示されるのも見どころのひとつ。平福百穂《豫譲》屏風 六曲一双 絹本裏箔着色大正6年(1917年) 第11回文展 特選永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)*前期(6月17日~7月30日)展示松岡映丘《室君》屏風 六曲一双 絹本着色大正5年(1916年) 第10回文展 特選永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)*後期(8月1日~9月10日)展示2日本画と洋画の橋渡しをしたコレクションに秘められた物語Art
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