「12時の方向だ!」。エクスカーションに参加したボぐんじょう前3時。ハレアカラ山頂を目指して、バスは真っ暗闇のワインディングロードをぐんぐんと上っていく。やがて、薄暗い世界から光と喜びへと舞い上がらせる太陽が顔を出す瞬間、下界を覆う雲海が一面ピンク色に染まった。そんな荘厳な景色が待つハワイ4島を巡るクルーズ船に乗り込んだ。 太陽が沈みきる直前、船は汽笛を響かせて黄昏のホノルルを離れ、ゆっくりと洋上を進む。窮屈そうに林立するビルや、丘に立つ家々から漏れる無数の小さな明かりが煌めいている。プールサイドでは華々しく出航セレモニーが行われている。クルーもゲストも一緒になって流行りの音楽とダンスで盛り上がっている。 デッキのバーで二人組の年配の女性に、日本人かと声をかけられた。頷くと喜びながら手を高く挙げ、ハイタッチを求めてきた。「イチロー・スズキ最高!マーリンズに来てくれてありがとう!」。二人とも大喜びで、周囲も巻き込んでのMLB談議に花が咲く、なんともアメリカらしいクルーズ初夜となった。 翌朝、船は最初の寄港地・マウイ島に到着する。マウイは「クジラの島」と呼ばれるほど、毎年10月頃からザトウクジラが南下してきて、温かい海で繁殖、出産、育児をし、4月頃再びアラスカの海へと戻って行く。ートに声が響いた。目をやると、ザトウクジラが潮を吹き上げている。体長10メートルを超える巨体がゆったりと群青色の海原を行く姿は、テレビで観るよりもはるかに雄大で美しい。 ホエールウォッチング・ツアーの発着地となるラハイナは、カメハメハ王朝時代、ホノルルに遷都するまでの1820年から1845年にかけて王国の首都だった歴史を持つ。ちょうど同じ頃に、鯨の油を求めるアメリカの捕鯨船がこの地に集まるようになり、ラハイナは捕鯨船団の寄港地としても大いに栄えた。1901年に建てられた『パイオニア・イン』は、そんな捕鯨時代の雰囲気を今に伝えている。その隣には、たそがれ 午36ナウィリウィリホノルルカフルイコナヒロカウアイ島オアフ島マウイ島ハワイ島
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