SIGNATURE2017年07月号
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樹齢130年を超えるバニアンツリーの木の下で青空マーケットが開かれている。クルーズ船に戻るバスが来るまでの間、海岸沿いに延びるノスタルジックなラハイナの街を、シェーブアイスでも食べながらのそぞろ歩きも楽しいものだ。 マウイ島を出航する午後6時、山頂で日の出を拝んだハレアカラ山に西日が当たり、ほんのりピンク色に山肌を染めている。出航をデッキから眺めていると、1頭のザトウクジラが手を振るようにヒレを上げた。 次の寄港地となるハワイ島一番の名所は、現在も活動を続けているキラウエア火山だ。ヘリコプターツアーに参加して上空から火口を覗くと、釜の中で真っ赤に燃えたぎる溶岩がはっきり見える。沿岸では激しい水蒸気を上げながら、溶岩が海に向かって大地を創造する場面を目撃した。 ヒロからコナへと移動中の夜、闇の中で真っ赤な溶岩が地上に噴き出すキラウエア火山の前をクルーズ船が通過した。それはまさに地球の鼓動を感じる瞬間であり、噴き上げるマグマに火の女神・ペレの姿が見えた気さえする。キラウエア火山の噴火は、「火の女神・ペレの怒り」と考えられている。気まぐれな女神のペレのこと、この溶岩の流出がいつまで続くか誰にもわからないが、見れば自然のエネルギーの凄まじさに畏敬の念を抱かずにはいられない。 プライドオブアメリカ号では、そんな〝生きているハワイ〞を、客室のバルコニーや船首のラウンジなど、自分の好きな場所で満足のいくまで眺めることができる。強力な自然と遥かな時の経過により、ハワイの島々が形成されたことを教えてくれる。 太陽の光が降り注ぐコナで日中を過ごした翌朝、バルコニーの手すりを叩く雨音で目覚める。最終寄港地となるカウアイ島は一年に335日雨が降るとまで言われている。デッキへと出てみると雨は止み、振り向けば巨大な虹のアーチが懸かっていた。虹の根元もすぐそこに見える。「レインボーステート」とも呼ばれ標高3055mのハレアカラ山頂は、ハワイにいることを忘れるほどの凍てつく寒さだ。しかし素晴らしい光を見ているとそんなことすら忘れてしまう。鋭い葉先を外に向けているキク科の銀剣草は、ハワイとヒマラヤでしか見られないとされる貴重な高山植物。37

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