SIGNATURE2017年07月号
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るハワイ州のなかでも、カウアイ島の虹は格別だ。船を降りてレンタカーで虹を追いかける。街中で、海辺で、岬の果てで、走っているといたるところで虹が現れる。時には二重に、また三重に空に懸かる。緑深いワイメア渓谷では、ウル・デ・リコの『虹伝説』のように、虹の生まれる瞬間に遭遇した。カウアイ島には「メネフネ」という小人が住んでいて、赤・オレンジ・黄色・緑・青・紫の6色の材料を集めて虹を懸けたという伝説が今に伝えられている。だからハワイでは、今でも虹を描くときは6色なのだ。 また、カウアイ島はポリネシア人が最初に住み着いた島であり、フラが始まった地とも言われている。ここでは盛大なルアウ(ハワイ式の宴)を体験したい。ストーリーテラーによるハワイ神話とともに、ポリネシアから厳しい海を渡ってハワイにやってきた時代から、ハワイで生まれた初めての子・カラマクの誕生までを、チャント(詠唱)、歌、迫力の踊りでドラマチックに綴られるショーが旅に花を添えてくれる。 7泊8日の旅のクライマックスは、原始の風景を彷彿させるナ・パリ・コーストだ。絶景を誇る27キロにおよぶ海岸は、これまで数多くの出版物や映画で「地上の楽園」として紹介されてきた。切り立った断崖、海辺の洞窟、深く切れ込んだ狭い谷に流れ落ちる滝。この景観は、数百万年におよぶ地形の変貌という、壮大な太古のドラマの産物だ。ゲストたちは、時折やってくるスコールにも負けず、デッキでその雄大な景色が現れるのを待ち望んでいる。 いよいよ、前方にナ・パリ・コーストが見えてきた。しかし、「神々の造形」と称される切り立つ緑の渓谷は霧に包まれていた。まるで生き物のようにうごめく霧の狭間から、時折うっすらと山肌に流れ落ちる力強い滝や、深い緑に覆われた鋭角な稜線が見え隠れする。しかしそれがかえって神秘的だ。となりで眺めていたご婦人が、誰言うとなく声を出した。「私は地球の旅を大いに楽しんでいる!」。下右:毎日異なる景色に沈んでゆくサンセットもクルーズの旅の楽しみのひとつ。時にはクジラが泳ぐ姿も見られる。下左:マウイ島に入港する手前で見える美しいイアオ渓谷。カメハメハ大王がマウイ軍を破り、ハワイを統一した決戦の地でもある。38

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