1990年代にエチオピアから独立したエリトリアは、アフリカで2番目に若い国。食文化はエチオピアとよく似ているものの、過去にイタリア植民地だった土地なので、エチオピアに比べ、パスタやコーヒーがさらに深く浸透している。離乳食も、「イタリア式」を取り入れ、小さなパスタに軟らかく煮た野菜を添え、オリーブオイルをかけるという料理法が普及している。 11か月になるセット君も、セモリナ粉の主食が好き。お気に入りは、オーガニックの「ステリーネ」(直径5ミリ)。イタリアとは異なる点もある。セット君はテヘワド教会のクリスチャンなので、豚肉は食べない。辛いもの好きのエリトリア人らしく、最近では、すでにチリパウダーにも親しみ始めている。「シロ」と呼ばれるガーリックとチリが少々入ったヒヨコ豆ペーストを、インジェラと一緒にペロリ。 「スーパーフード」と評判のテフの粉を発酵して作る「インジェラ」に関しては、エチオピアの回ですでに取り上げた。薄く焼き上げ、おかずを載せてお皿代わりにするインジェラは、クレープに似ているが、家族や友人とシェアをしながら食べるのが特徴だ。ナイフやフォークも使わず、ちぎったインジェラにおかずを挟み、右手で口に運ぶ。親愛の情を示すため、相手の口まで運ぶ食文化があり、もちろん、子どもに対しても行われる。セット君も、ママやパパの膝の上で、愛情たっぷりにインジェラを食べさせてもらっている。 「1歳を過ぎれば、もう、家族みんなで一緒に食事する。インジェラを囲んで、みんなとほぼ同じものを食べるよ」と、セット君のパパ。11か月にして、「辛さ」に慣れる道のりを歩み始めたセット君であった。231asteShiro P 三つ子の胃袋百までも、文・にむらじゅんこ48エリトリア「紅海」に根付く パスタ&コーヒー
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