564 にむらじゅんこ|ライター、翻訳家、比較文学研究者、1児の母。長年のフランス暮らし、モロッコ通い、上海暮らしなどを経て、現在、鹿児島大学講師。著書に『クスクスの謎』(平凡社新書)、近著には、『海賊史観からみた世界史の再構築――交易と情報流通の現在を問い直す』(稲賀繁美編、思文閣出版、共著)などがある。 アフリカ北東部は、コーヒーの原産地。エリトリアのエスプレッソやマキアートは美味しく、イタリア人でさえ舌を巻く。筆者も、エリトリアコーヒーがこれほど美味しいものだとは知らなかった。 エチオピアのコーヒーの儀式は有名だが、エリトリアでも同様のコーヒーの儀式がある。女性が身につけるべき作法のひとつとされており、客の目の前でフレッシュな豆を焙煎する。感謝ともてなしの心が込められている「珈琲道」だ。 実はエリトリアでは、嗜好品としてだけでなく、民間医療にもコーヒーが用いられている。とりわけ、子どもの風邪薬代わりとする風習があるのだとか。 「カフェインが入っているでしょう。利尿や解熱の効果もあるので、早く治るよ。できれば、砂糖の代わりに蜂蜜を入れる(注)。喉にいいからね」と、セット君のパパ。 「子どもには刺激が強すぎて、眠れなくなってしまうのでは?」と聞いてみると、「意外かもしれないけど、結構効くんです。 私たちも、子どもの頃に、飲まされたことがあります」と、ママ。ただ、コーヒーは酸化しやすいため、その場で焙煎して挽いた新鮮なものに限られるそう。また、市販の風邪薬にはあらかじめカフェイン配合のものも少なくないので、コーヒーと併用するとカフェインの摂取過多が懸念される。薬を飲む場合は、あくまでもお水で飲むのだとか。コーヒーは、子どもたちの風邪薬1.パパに抱っこされるセット君。2.子ども向け星型パスタ「ステリーネ」。3. ある日のセット君のランチ。オレンジ色のペーストが「シロ」。4. 家族で食べるインジェラ。中央に鶏の煮込み、野菜、米などが置かれる。5.ローストされていないエリトリアのコーヒー豆。6.ポップコーンをおつまみにいただくコーヒーの儀式。49Photos by Junquo Nimuranumber36(注)1歳未満の子どもに蜂蜜は与えないでください。 Eritrea
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