SIGNATURE2017年07月号
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賀県・有田町で有田焼の真髄に迫り、有田町や佐賀県の食材と器を使ったトップシェフの料理に出合うという旅が、2017年3月初旬に行われた。東京・銀座『レカン』の高良康之シェフと有田焼の一夜限りのコラボレーションディナーである。 一行は、福岡空港からバスに乗り、昨年、窯業400周年を迎えた有田焼の歴史を、車内でビデオを観賞しながら、有田町に向かう。まずは数百年にわたって磁石が採掘された泉山磁石場跡を見学。その後、『龍泉荘』で鯉料理を堪能する。名水百選である有田町の水で育った鯉は、臭みが微塵もなく、ほのかに甘い味わいは鯉嫌いも虜にしてしまう。 その後は窯元見学。『深川製磁』では、工場で各工程を見学し、特別展覧室で、皇室に納められた品々などを拝見する。その後は、モダンな作品を作り出している『アリタポーセリンラボ』、斬新な色合いで魅了する『真右エ門窯』を見学し、ご主人から作品づくりの話を伺った。 その後にいよいよディナーである。「身が引き締まる思いです」。当日に料理を盛る大皿を見た高良シェフは、そう話していたという。 各窯元の皿に盛られた料理は、器と抱き合い、互いを輝かせている。有田町と佐賀県の食材もまた、新しい魅力を引き出されている。クレソン、菊芋、白アスパラ、菜花、香菜、有田鶏、鯉、有田豚、有明海苔が、フランス料理の精神をまとい、エレガントに変身して、心を魅了し、体に染み渡っていく。 特に驚かされたのは鯉料理で、丹念に骨切りされた鯉は、ふわりと口の中で身を崩し、淡味に潜ませた滋味を滲ませる。そして赤ワイン3本半を注ぎ込んだというソースが艶を与え、バニラを加えた菊芋のヴェルーテが、華やかさを加える。 まさに食材に敬意を払い、愛を注ぎ上:高良シェフと参加者の熱気で夜が更けていくディナー会場。下:『深川製磁』のみごとな富士山の皿とフランス料理の出合い。高良シェフは皿を前に、「身が引き締まる思いです」。『泉山磁石場』にて、高良シェフと筆者。58佐

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