SIGNATURE2017年07月号
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寿氏の提案で新設されたのが「ラベルデザイン部門」。審査委員長は「くまモン」のデザインで知られる水野学氏が務めている。 「どうやったらより多くの人に伝わるか? 日本酒の美味しさは伝えられても、銘柄まではなかなか覚えてもらえない。それでは意味がないと思います。英字表記だから外国人に伝わるわけではありません。ラベルを通じてそこを考えるきっかけにしてほしい」と、独立して審査する意味を中田氏は力説する。 このコンペティションが日本酒業界にもたらす影響について、土井鉄也さんにコメントをいただいた。土井氏は広島県を代表する『宝剣』の蔵元杜氏でもあり、造り手としての顔も持っている。 「毎年レベルが高くなっています。昨年までは『甘だるい』印象のものが散見されましたが、キレイな甘みに流れている日本酒が増えています。酒蔵の技術が上がっている部分も大きいと思います。造り手が切磋琢磨し合っていい影響が出ているのではないかと思いますね。僕自身、審査員を務めることで、自分の酒がよくなるための基準をいただけています。もし、自分の酒が悪ければ、なぜ悪くなったかの比較ができますから」 実行委員会の『はせがわ酒店』長谷川浩一社長は、今日の日本酒ブームを牽引してきた立役者。新設された「発泡清酒部門」について伺った。 「ここ数年の傾向としては〝甘さ〞と〝ガス感〞の活かし方に注目が集まっています。その意味で発泡清酒部門は面白い試みになりました。料理との組み合わせも悪くないと思います。まだ未完成のものも多いので、このジャンルなりの方程式を確立できるように関係者とともに煮詰めていきたいですね」 この審査ではワイン用のテイスティンググラスが使用された。これも世界を意識した部分なのだろう。今後、日本酒はどういう方向に発展していくのだろうか? 長谷川氏が再び口を開く。 「今年は22点が海外から出品されたことからもわかるように、海外の造り手が増えています。私たちの知らない国でも造られるようになってきた。海外出張で目にすることが増えましたし、日本酒は日本の国で造るものという定義がありますが、その枠はもう外していいかな、という気がします。ワインやウイスキーが世界中で造られているように、世界で醸される日本酒があってもいいのではと最近思うようになりました。もちろん『國酒』として大切に守らねばならないものもありますが」 日本酒の国際化で、新たな輸出品としての可能性は、年ごとにますます広がっている。こくしゅ年ごとに精米歩合が小さくなり、今や「一桁台」の磨きも多く、日本酒のプレミアム化が進みつつある。右:既存5部門のテイスティングには、青の同心円が描かれた白磁の「蛇の目」のきき猪口が、「発泡清酒部門」にはワイングラスが用いられた。/下の2点:2017年から新設された「ラベルデザイン部門」の審査員。左から、発案者の中田英寿氏。水野学氏、鈴木啓太氏、村上雅士氏。予審会のテイスティング。純米酒、純米吟醸、純米大吟醸、吟醸の4部門の総出品数1576点から577点にまで絞られ、決審会へと進む。外国人審査員による「Super Premium部門」62点の審査。ボトルにはジャポニズムを意識したパッケージが数多く見られた。74

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