もうひとつ驚かされるのは、作家たちが若いこと。日本の人間国宝は、長く研鑽を重ねてきた老齢の大家が多いが、メートル・ダールは違う。次世代へフランスの文化遺産を継承する情熱が重要だからこそ、脂が乗っている作家に白羽の矢が立てられるのだろう。 「メートル・ダールを認定する基準は3つ。まずは、最低15年間、現在の職に従事していること。また、イノベーションの精神を持ち、伝統技術を革新する貢献を行っていること。そして、認定後には弟子に惜しみなく自身の技術を継承する使命を負います」 今回の展覧会でも、未来を意識し、15名を最終的に決定したとケルマシュテールさん。 「独特の世界観を持ち、感動をつくり出す人であり、技術を自分のためではなく、次世代へ伝えるべき使命だと考え、真摯に物作りを行っている人物を見極めました。この会は、最も美しいフランスの工芸作品を披露するだけにとどまらず、作家自身の人生の美学に触れることができるものになると思います」と語る。 そのために、日仏の職人による対談をはじめ、子供向けのワークショップなども企画されている。 「人間国宝のルーツである日本の人々にこそ、現代のフランスで躍動する伝統工芸を知ってもらい、感動を味わってほしいと思っています。これは、フランスから日本への特別な思いを込めた贈り物なのです」informationHélène Kelmachterキュレーターエレーヌ・ケルマシュテール会場:東京国立博物館 表慶館東京都台東区上野公園13-9会期:2017年9月12日~11月26日電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)開館時間:9:30~17:00※金曜・土曜、11月2日は21時まで※9月17日・18日・24日は18時まで※9月22日・23日は22時まで(入館は閉館30分前まで)休館日:毎週月曜日9月18日、10月9日開館9月19日休館http://www.fr-treasures.jp/31カルティエ現代美術財団学芸員、在日フランス大使館の文化担当官を経て、現・アルゼンチンのフランス大使館に在籍。フランスおよび日本で数多くのフランス文化の展覧会を手がける。イッセイミヤケ氏とのデザイン展は記憶に新しい。「仕事と趣味の境目がない」と語るのは、独学で人間国宝になったという異例の経歴の持ち主。膨大なアンティーク傘とそれに関する資料のコレクターでもある彼は、まさに洋傘の生き字引だ。芸術性が高い傘は、映画『シンデレラ』、『イヴ・サンローラン』でも用いられた。左2点:バッグや財布だけでなく、革張りの宝石箱やオブジェなど、顧客のあらゆるわがままを叶える百戦錬磨の革細工職人。右2点:原材料の確保の困難という壁に直面しながらも、趣向を凝らして創意に満ちた作品を生み出し続ける鼈甲細工職人。「フランス人間国宝展」
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