37 「“パチカ”とは、パーチメント(透過)+化を組み合わせた言葉です。加熱型押しすると文字が透過する紙で、木材パルプと特殊な原料を混合して作られます。様々な洋紙を提案する中から、ノグさんがパチカの新たな可能性を見出し、作品に使われるようになりました」 そう教えてくれたのは、竹尾の代表取締役社長・竹尾稠さん。1899年から続く老舗である紙の専門商社、竹尾は、もともと海外から優れた洋紙を輸入し、日本へ紹介・販売してきた。2005年ごろから、日本の優れた紙を欧州に輸出し始め、パリに拠点も造る。エンボスに適した紙の扱いでは、竹尾はすでに第一人者だった。そのため、ノグ氏との縁ができ、現在では、竹尾なくしては自分の作品は完成しないと言わしめるような関係を築くようになった。 「私たちはペーパープロデューサーとして“感性素材”を扱っています。その素材を、“心に響くものづくり”を行っているクリエイターの方に指名していただけるのは非常に光栄なことだと思います」 フランス人間国宝の稀なる美しい作品の陰に、日本の素材ありだ。職人の手によってひとつひとつ彫刻された版。緻密さと美しさに、思わず息を呑む。ノグ氏の工房では、テクノロジーの導入にも積極的だが、人の手が生み出す芸術性が最重要視されている。クチュールメゾンが販売するキャンドルのパッケージ。プラスチックよりもエコロジーな紙を好むデザイナーも多い。スピードよりもクオリティが優先され、構想から8年かけて完成に至ることも。点字本の挿絵に用いられる版は、精密機械によって彫られたもの。熟練工の手仕事と比較しても遜色がない仕上がりで、天使の髪質や表情、翼の躍動感までをも細かく表現することが可能に。ノグ氏の作品に欠かせない、日本生まれの洋紙竹尾の“パチカ”
元のページ ../index.html#31