SIGNATURE2017年08_09月号
51/82

がモンブランに対する個人的な印象だ。 13年前に筆記具の専門誌『趣味の文具箱』を創刊した。以来、世界中のペンブランドの新製品や歴史、物語を誌面で追い続けている。中でもモンブランに割いたページが最も多い。モンブランの創業は1906年。100年ブランドであり、マイスターシュテュックという伝統的なコレクションがあるが、次々と登場する製品の発想、デザインはいつも革新的かつ挑戦的だ。 5月に登場した万年筆は、日本の伝統芸術が融合した注目のモデル。京友禅の着物で名高い千總に伝わる『源氏物語』の文様がみごとに表現されている。キャップとボディは無垢の純銀をマット仕上げにして、18金ソリッドゴールドの象嵌を加え、豊かに立体感を表現している。世界限定55本で、1本は300万円を軽く超える。 発表の方法もかなり斬新だった。京都の清水寺奥の院で、能と現代音楽、ファッションがコラボレーションした「能オペラ」を特別上演。視覚と聴覚を刺激する現代的なアレンジは、日本の伝統を象徴する京芸術と最先端のクリエーションが一体となった、まさに最新モデルのコンセプトそのものだ。 筆記具は文明を生み出し、文化を支え続けてきた。国境を越えて世界中の芸術を礼賛する、いかにもモンブランらしい一線を越えた演出は、古都の夜に妖艶に響き渡っていた。来と芸術に向かって、前向きに一線を越え続けるブランド。これ59お問い合わせ モンブラン コンタクトセンター フリーダイヤル0120-39-4810www.montblanc.com左:「京芸術へのオマージュ」世界限定55本、3,464,208円(税込)。右:1555年創業の千總が所蔵する着物の柄を元にデザインした。Text by Shigeki ShimizuEVENT REPORTMontblanc―Homage to Kyoto Artistry平安の物語が万年筆に未

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る