SIGNATURE2017年10月号
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初 めて『屋根の上のヴァイオリン弾き』の出演依頼がきたのは13年前。日本のミュージカル界を牽引するだけでなく、蜷川幸雄演出の舞台など、幅広い活躍を遂げていた市村正親が主人公のテヴィエ役と出合ったのは、54歳の時だった。 「テヴィエといえば信心深いユダヤ人で、しきたりを重んじて生きている3人の娘の父親です。森繁久彌さんのイメージが強い役でしたし、その後に西田敏行さんが受け継いでいたので、大柄な人が演じる役だと思っていました。だから僕は、てっきりテヴィエの長女・ツァイテルの相手役であるモーテルに選ばれたのだろうと思い込んでいたんです。ところが、テヴィエ役だった。自分がテヴィエを演じることができるかどうかは半信半疑だったんですが、森繁さんが使っていた衣裳を着て、メイクをして、髭をつけて荷馬車の上に乗ったら、どこから見てもテヴィエでした(笑)。僕もこの役にふさわしい年齢になったんだなと改めて思いました。最初はエネルギッシュな感じでしたが、それから再演を重ねてきて、それなりに落ち着いた感じになりました。再演のありがたいところは、何年か間を置くことで、その役が自分の中に浸透していって、次第に染まっていくこと。だから、幕が開いて、音楽が演奏されて、衣裳を着て舞台に立てば、テヴィエ以外の何者でもない感じになるんです」 『屋根の上のヴァイオリン弾き』は1964年にブロードウェイで初演され、トニー賞ミュージカル部門の最優秀作品賞、脚本賞など7つもの賞を獲得した名作。日本では〝市村テヴィエ〞もすっかり定着し、今年はこの名作の日本初演から50周年を迎えるという節目の年である。これだけの年月を経ても褪せることのないこの作品の魅力とは何か。 「4年前に上演されて、2年前くらいに再演することが決まったと聞いたときは、また〝あの世界〞で生きることができるんだという思いが甦ってきて、うれしかったです。またアナテフカ(※1 ) の地の住人や大切な家族たちと会えると思うと、とても懐かしい気持ちになる。他人の人生を借りて、苦しんだり、悩んだり、喜んだりできることは僕にとって幸せな瞬間です。家族をテーマにしているミュージカルはそれほど多くないですから、父、母、娘たち、息子たちのそれぞれについて描かれた物語のどこかに、誰しもが共感すると思うんです。しきたりの中で生きている一家ですが、そのしきたりを娘がどんどん破っていく。娘たちに翻弄され揺れ動く父親を主軸に一つの大きな幹となって、その枝葉に母親や娘たちの人生観がある普遍性のある作品です。人間が生きている限り、永遠に繰り返されるであろう物語です。でも、この作品の魅力はそんな理屈だけではないと思うんです。アナテフカの世界で僕がテヴィエとして生きているのが楽しい。僕が楽しいからこそお客さんも楽しんでいるのではないでしょうか」 実生活においても2児の父親となったことで作品への理解も深まったようだ。それが彼の演じる父親像にリアリティをもたらしているのであろう。そして「テヴィエとして生きる」と語った言葉にあるように、市村は自身が天性の役者であることを自覚している。 「僕はわりと役がすっと入ってくるんです※1  『屋根の上のヴァイオリン弾き』の舞台となった20世紀初頭※2  フランス演劇史上最長のロングランを記録した舞台劇。※3  英国の国民的作家、ディケンズの名作『クリスマス・キャロよ。マクベスを演じているときは、この役は自分のためにある役だと思うこともあるし、『ラ・カージュ・オ・フォール』(※2 )のザザも僕だと思うし、『スクルージ』(※3   )も僕そのものだと思う。カメレオンのように、どんな世界にもすうっと溶け込んでしまうんです。誰かの人生に入って、まるで自分の人生であるかのように、その世界で息をしている自分を実感する。生まれもっての役者なんでしょうね。一方でふだんの僕は子どもの付き人です(笑)。旅行に行ったときには子どもの後始末ばかりやっている。そんな自分もエンジョイしているし、舞台に立つときもエンジョイしています。エンジョイという言葉の意味が何となくわかるようになってきたと思います。自分が生きていること、役で生きて感じることも楽しむべきですよね。僕の俳優生活も45年くらいになるんですが、ホームグラウンドである日生劇場でテヴィエを演じることができるのも光栄です。お客さんたちの興味津々の視線を感じつつ、僕は次々と起こることについて神と対話する。それは、その時、その瞬間でしか生まれないことに自分自身が出会えるということなんです」 テヴィエの妻・ゴールデ役の鳳蘭とは共演を重ねてきたが、メインキャストが一新されたことも今回の見どころである。 「新しいキャストとともに新しいファミリーをつくっていく。そこから生まれるものを楽しんでいただきたいです」 の帝政ロシア領の村の名前。 『Mr.レディMr.マダム』として映画化された。 ル』を原作にしたファミリーミュージカル。【チケット取扱日時】2017年12月12日(火)、 14日(木)、20日(水) 18:00 チケットのご購入は、カンフェティチケットサービス受付デスクまで12月14日(木)、 27日(水) 13:0012月23日(土・祝)、 24日(日) 12:0012月23日(土・祝) 17:0014※今回は特別販売のため、電話受付およびチケット実券郵送のみの限定対応となります。 なおWEB予約受付はありません。 ※チケット発送は11月下旬の予定です。※チケット売れ行きにより完売となる公演もございます。あらかじめご了承ください。Ticket Informationフリーダイヤル 0120-243-543(月~金10:00~18:00 土・日・祝休)※やむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。あらかじめご了承ください。※出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。※未就学児童のご入場不可。日本初演50周年記念公演ミュージカル 屋根の上のヴァイオリン弾き公演日程:2017年12月5日(火)~12月29日(金)会場:日生劇場(東京・有楽町)台本:ジョセフ・スタイン音楽:ジェリー・ボック作詞:シェルドン・ハーニックオリジナルプロダクション演出・振付:ジェローム・ロビンス 日本版振付:真島茂樹/日本版演出:寺﨑秀臣出演:市村正親、鳳 蘭 他公式ホームページ http://www.tohostage.com/yane/料金:S席特別価格(税込)12,000円(定価13,000円)

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