かつての実業家たちに茶の湯は必須だった。それは大人の作法と遊びにあふれる社交の場。今回の茶会の濃茶席の亭主も務め、茶の湯の数奇者として知られる筒井紘一さんと、服でもてなす「茶会」というスタイル茶会の舞台となる『叶匠壽庵』の芝田冬樹さんにお茶の魅力についてお話しいただいた。茶の湯 茶道研究家対談筒井紘一さん人生の愉しみをその醍醐味深めるお茶濃茶席で使う瀬戸茶入席主の二人。仕覆の布や茶入の木型についてなど、話題は尽きない。銘「淀」と、その次第(付属品)を熱心にみる筒井紘一さん(以下、筒井):この秋にダイナースクラブ主催で行われる松壽庵茶会の魅力は、「茶会」でありながら、「茶事」の醍醐味を味わうことができる、ということなのですが、最初に読者の方のために、茶会と茶事の違いを少しお話しさせていただきます。明治時代以前のお茶はすべてが少人数で行う「茶事」だったのですが、明治以後になって茶道人口が増えたことにより、大勢のお客を招いて菓子とお茶一が出来上がりました。料理をきちんと出して、少人数の客をもてなす茶事をする機会が少なくなったのです。私は本来、茶事をしなければ茶人ではないと申し上げているので、芝田さんのお父様に「人数は15人くらいになるけれ32茶の湯の醍醐味のひとつに、時代を経て大切に伝わってきた貴重な美術品や、美意識のある古人が愛用していた道具に、今度は自分が触れることができるという歓びがある。濃茶席で使われる茶碗5種は、いずれも垂涎の時代物。どの茶碗でお茶がいただけるかは、当日の席でのお楽しみ。右から、釘彫伊羅保 銘「老松」(近藤其日庵旧蔵)、織部沓茶碗、絵唐津(益田鈍翁・青山二郎旧蔵)、古萩 銘「白さぎ」(赤星家旧蔵)、灰被天目。今日庵文庫長、京都府立大学客員教授、茶道資料館副館長。茶書や懐石の研究など、広く茶道文化の研究・執筆を行う一方で、裏千家の数寄者として様々な茶会の亭主を務め、茶道文化の普及を学・実の双方から支える。
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