SIGNATURE2017年10月号
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だし「瓢亭」と「鮪出汁」の関係とは?世界の名だたる人々が訪れる『瓢亭』でその魅力を聞いた。そこには、出汁に対する 一意専心の思いがあふれていた。極上出汁と茶の湯の心瓢亭で知る   その奥義文・編集部 毎朝9時頃から、出汁引きが始まる。厨房はもちろん、表玄関にまでその香りは広がり、辺り一帯にそれはおいしそうな出汁の香りが漂う。実はこの作業は前日からの準備によるもので、昆布は『瓢亭』のために用意された利尻産の最上級の品。翌日に使う分量をサッと流水で軽く流し、竹皮で結わえて吊るしておく。通常15リットルの水に対して、300グラムの昆布と350グラムの鮪節を使う。まずは、昆布を1時間の煮出しを行う。次に鮪節を入れ20分以上かけて十分な旨みを取り出すが、出来上がりは10リットルと5リットルも少なくなるという。出来上がった出汁は、ネルの布でていねいに漉されるが、肌理の細かいネルの布を用いることで、一層澄んだ黄金色の出汁が出来上がる。これが天下一と名高い『瓢亭』の出汁の基本だ。 『瓢亭』では「一番出汁」「二番出汁」「八方出汁」の3種類を使い分けてきめ 38蓋を開けた瞬間、出汁のドラマが始まる。深い香りと味わいは極上の幸せ。椀:三珍果蒔絵椀大徳寺管長から『瓢亭』の主人に宛てた為書。瓢箪の中の文言は興味深い。65度から70度の温度を保ちながら、約

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