SIGNATURE2017年10月号
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ともよくわかっているし、今でも松井さんに感謝をしている。 私たちは松井さんがメジャーに挑戦した年に、彼の選手生活が無事であることを込めて庭に一本のシラカシの木を植えた。彼が成長するのと一緒にその木が成長してくれるのを願ったからだ。 今夏も、そのシラカシは茫々と茂っている。 あのワールドシリーズで松井さんがMVPを獲得したゲームでは家人は涙ぐんでいた。おそらくもう日本人選手でワールドシリーズのMVPを獲得できる選手はあらわれないかもしれない。 私は、彼のプレーを見ることができた十年間にこころから感謝している。 だから彼が引退を表明した時の記者会見は動揺したし、それ以降、テレビのメジャーの中継を見ることが少なくなった。 そんな折、私は仙台のゴルフ練習場で、一人の若者の練習する姿を見た。まだ身体も細く、ガムシャラにクラブを振っているように見えたが、その若者の目が印象的だった。 数日後、練習場の私のコーチに紹介をされて、その若者が、マスターズのローアマチュア(アマチュアでトップになること)の栄誉を受けた松山英樹君だとわかった。礼儀正しい若者だった。直立不動で私に挨拶する姿を見て、競馬の騎手の武豊さん、野球の松井秀喜さんの初印象と似ているのに驚いた。 家に帰って、松山君の印象を家人に話すと、彼女はこともなげに、 「ヒデキ君は誰でもいい子なのよ」 と言ってのけた。 私は今、月に数度ゴルフに出かける。8Charlotte

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