港区赤坂の日枝神社の豊かな緑に隣接する『ザ・キャピトルホテル東急』。創業50年を超える歴史の中で、ザ・ビートルズをはじめ、外国からも多くの要人をゲストに迎える、伝統あるホテルだ。その理由は、都心では貴重な緑に囲まれた静かな環境にもかかわらず、銀座や六本木、皇居にも近いアクセスのよさがあったからかもしれない。2010年にリニューアルオープンしてからも、閑静な落ち着きの中にモダンな「和らぎ」が感じられる、大好きな大人のホテルだ。 メインエントランスから渡殿を抜けると、庭園に囲まれた特別な空間が広がる。メインダイニングの日本わたどの料理『水簾』だ。その一角に、今年の春、天麩羅コーナーが新設された。たった6席の檜のカウンターだけの空間は、客席と天麩羅職人の曽雌哲也さんとの距離も近く、自ずと会話が弾んでとても楽しい。まずは、読めない〝曽雌〞の苗字の話題からはじまり、食材の話に移っていくのが定番だ(笑)。一見、素朴な印象の曽雌さんだが、話してみると話題は実に豊富。「とにかく天麩羅は素材勝負」と、食材へのこだわりがものすごい。「今月の一皿」に選んだ自慢のウニの天麩羅は、大葉で包んで外側はカラッ、でも中はフレッシュ。〝海の宝石箱〞の揚げたての熱々は、生とはひと味違う美味しさだ。そし この日の旬のネタは、宮城県産の天然舞茸。さくっとした食感と香りが口の中でじゅわっと広がる。ぜひ、何もつけずに食べてほしい。梅肉、すだち、塩、天つゆと、何でもそろっているが、天麩羅のサクサク感と素材の甘みをダイレクトに味わいたいならば、合間に塩を少しつまみつつ、そのまま食べるのがおすすめだ。 ホテルが立つこの地はかつて稀代の美食家・北大路魯山人が主宰した会員制料亭『星岡茶寮』があった場所。そのもてなしの心を受け継ぎながら、ゲストを魅了し続けている。この特別贅沢な空間で、揚げたての旬の天麩羅を心ゆくまで味わってほしい。熱々揚げたて、〝海の宝石箱〞 住所:東京都千代田区永田町2-10-3電話:03-3503-0873営業時間:昼11:30~15:00(L.O.14:30)、 夜17:30~22:00(L.O.21:30)年中無休水簾 天麩羅職人が開拓したネットワークを活かし、四季折々の新鮮な食材が日本各地から届くのが『水簾』の強み。季節ごとに訪れたい天麩羅カウンターだ。昼のコースは豊楽6,800円と祥鳳9,000円。夜のコースは福寿15,700円と鳳舞18,000円(税・サ込)。いずれのコースも、前菜と天麩羅数種、天丼か天バラ、天茶のチョイス、香の物、水菓子という構成。天麩羅職人NumberPhotographs by Masahiro OKAMURA(CROSSOVER) Text by Tomoyasu SHITAYATetsuya SOSHI16曽雌哲也124今月の一皿
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