SIGNATURE2017年12月号
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あって、リードしている側にわずかな心の隙が生じて流れは変わります。後半16分ごろ早稲田は、自陣から軽快に攻めて落球のミスをします。何か特別に悪いことをしたわけではない。でも、どこかで誰かが、隣の選手に簡単にパスをするのではなく縦に当たり勢いをつけるべきでした。この時点で26対5。もう勝てるだろうという気持ちが楽なほうを選択させました。自分が動きやすいプレーを選んで相手の嫌がる痛いことをしなかった。ほとんど潜在意識の世界です。そこから筑波はトライを返します。早稲田は齋藤を軸にもういっぺん引き締まり33対10で試合を終えますが、あの場面がなければもっと滑らかに差を広げられたはずです。前半終了時にスタミナが切れそうに見えた筑波のフォワード陣も、一試合を通じて頑張りとおしました。試合後の涙に、この試合に懸けていた彼らの気持ちを感じました。 余談ですが、監督にとって、スクラムハーフにいい選手がいるだけで、試合を楽に運べるのです。なぜならば、9番が一番ボールに触る機会が多く、そのプレーによってペースをつかめるからです。齋藤はハーフとしてのセンスにあふれ、パスやポジショニングが抜群にいいプレイヤーです。声も出すし元気もいい。しかも、彼はコンバージョン(トライの後に行うゴールキック)も蹴ります。ハーフの選手はゲーム中に絶えず足を使っているので、普通ならキックは担当しません。その点でも彼はスペシャルです。このまま育っていけば、2019年のワールドカップのメンバーに入るかもしれませんので、齋藤直人の名前はぜひとも覚えておいてください。JRFU(日本ラグビーフットボール協会) https://www.rugby-japan.jp712017年10月14日、秩父宮ラグビー場、「関東大学ラグビー対抗戦」青山学院大学vs帝京大学戦。帝京大キャプテンのHO堀越康介(中央上)とFB尾崎晟也(同下)。「関東大学ラグビー対抗戦」青山学院大学vs帝京大学戦のノーサイド。ダイナースクラブは大学ラグビーを応援しています

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