SIGNATURE 2018 1&2月号
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Photographs by Tadahiko NAGATA Text by Tomoyasu SHITAYAロッツォ シチリア東京都港区白金1-1-12 内野マンション1F電話:03-5447-1955営業時間:18:00~24:00(L.O. 23:00)定休日:日曜、祝日の月曜 店名の「ロッツォ」はイタリア語で「荒々しい、剥き出しの」といった意味。料理もサービスも、飾らず、気取らず、上質な素材と伝統を受け継いだレシピで、本格的なシチリアの味を提供する。「まるごと水牛のモッツァレッラと どっさりプチトマト」2,592円。「牡蠣のオリーブオイル煮」3,024円。「冷凍自家製果実酒」1杯432円、4種類各1杯で1,080円。 *すべて税込み。きな「カプレーゼ」をまずお願いする。見た目にも色華やかなその一皿は、水っぽさもなく、トロッと絡んだソースがトマトとチーズの旨みをさらに引き立てる。その秘密は「塩をかけたトマトの浸透圧から出たジュースにゼラチンを混ぜてつくっていることです」と、シェフの中村嘉倫さんがそっと教えてくれた。  メニューには目移りする宝石のような言葉が並ぶ。選びきれない中からもう一つ紹介したいのは「牡蠣のオリーブオイル煮」。北海道の昆布森牡蠣を使って茄子とオリーブのペーストに絡める。低温で煮た牡蠣のうまさにフォアグラか、はたまたあん肝が混ざったような不思議な味だ。 「シェフの中村も、自分も偏っている人間なので、二人でちょうど補い合えるんだと思います」と、ソムリエの阿部努さんは笑って話すが、実際は補い合うというよりも、二人がそろうと料理も空間もお酒も素晴らしさが何倍にも増すのだ。  初めて会った日から阿部さんに強烈に勧められるのが、自家製の「レモンチェロ」。飲みやすく爽やかだけれどそのパワーはものすごい。そのほかにもアンズや柿やコーヒーフレーバーのものもあり、食後酒だけを楽しみに深夜に訪れることもしばしばだ。シチリアの、どちらかというと素朴な料理を、妥協なく本格的に楽しみながら陽気に夜を過ごす。ここにいる仲間は、みんなきっと同じ思いだ。 人情味あふれる温かな商店街を抜けて、港区白金にある四の橋に出るとちょっとお洒落なお店が見える。このあたりは隠れた名店が多く、お洒落感と昔ながらの白金が妙にマッチングしている、不思議な場所だ。近所に住んでいる友人たちが絶賛するのがここ『ロッツォ シチリア』。24歳の時に出会った二人がいつかお店を一緒にやろうと誓い、十数年後に願いが叶った二人の魂のリストランテだ。 店内に入ると、まず味のあるカウンターが目に飛び込んでくる。開店と同時に満席になるカウンターは、わいわいがやがやとイタリアそのものの雰囲気だ。カウンター好きの僕は、もちろんカウンターに陣取り、大好剥き出しのシチリア今月の一皿126Number中村嘉倫Yoshimichi NAKAMURAオーナーシェフ阿部 努Tsutomu ABEオーナーソムリエ16

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