SIGNATURE 2018 1&2月号
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13世紀に要塞として建てられた館。その後、ゲーテの戯曲『エグモント』のモデルで、ベートーヴェンによる同名の劇音楽で知られるエグモント伯(1522~68年)ら、名門貴族によって所有され、19世紀にネオルネサンス様式に改築。城内には豪華なタペストリーや調度品、絵画などが展示されている。プラハ・ロブコヴィツ宮殿の《干し草の収穫》や、ウィーン美術史美術館の《雪中の狩人》と同じく、季節ごとの農民の生活を克明に描いた連作月暦画の一点とされる《穀物の収穫》。ブリューゲルの 風景を訪ねてベルギーの首都ブリュッセルから南西約12キロに位置するガースベーク城。13世紀、このあたりを治めていたブラバント公の館として建てられたこの城の庭園からは、フランダースの田園風景を一望することができる。 地平線の果てまで続く小麦畑。牧草地をのんびりと横切る羊の群れ。水路の水は、秋の陽光を反射して輝き、ところどころ黄金色に色づき始めた木々の緑が風にそよぐ。 今から約450年前、この風景を自らの絵画に描きとどめた画家がいた。怪物たちが跋扈する幻想画で知られるヒエロニムス・ボスや、17世紀、ヨーロッパ中の王侯貴族に愛されたペーテル・パウル・ルーベンスと並ぶ、16世紀フランドル絵画の巨匠、ピーテル・ブリューゲル1世(1525/30〜1569年)である。 1554年頃、2年にわたるイタリア旅行を終えアントウェルペンに戻った彼は、まず銅版画の下絵描きとしてそのキャリアをスタートさせ、雄大な風景画やボス風の幻想画などで人気を博した。1563年、結婚を機にブリュッセルに移ると、フランダースの自然と共に生きる農民たちの油彩画を描き始める。都会に住む文化的エリートでありながら、農村での生活に魅了されたピーテル1世は、しばしば農民に扮して村を訪ね、人々と食事やダンスを共にした。17世紀、ネーデルラントの画家たちの伝記をまとめた、画家で詩人のカーレル・ファン・マンデルは、そんなピーテル1世についてこう書いピーテル・ブリューゲル1世1565年 油彩・板 118×161cm メトロポリタン美術館蔵© New York, Metropolitan Museum of Art / アフロ《穀物の収穫》Kasteelstraat 40, 1750 Gaasbeek (Lennik) , Belgium開館期間:4月初旬~11月上旬開館時間:10:00~18:00 月曜休Tel:+32(0)2 531 01 30http://www.kasteelvangaasbeek.beKasteel van Gaasbeekガースベーク城ばっこ30

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