SIGNATURE 2018 1&2月号
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「王の画家にして画家の王」と呼ばれた巨匠ルーベンスの自宅兼アトリエだった邸宅は、美術館として公開されている。ルーベンス以外にも、ヤン1世の《猿の饗宴》(1621年)(右・部分)など同時代の画家の作品などが展示されている。右:磔刑に処されたイエスの亡骸が降ろされる場面が描かれたルーベンスの三連祭壇画《キリスト降架》(1611~14年)は縦4.2メートルの大作。対になる《キリスト昇架》(1610~11年)や《聖母被昇天》(1625~26年)など、ルーベンスの巨大な祭壇画は圧巻そのもの。Groenplaats 21, 2000 Antwerpen, Belgium開館時間:月~金10:00~17:00/土10:00~15:00/日・祝13:00~16:00*ミサにより異なる場合ありhttp://www.dekathedraal.be/en/Onze-Lieve-Vrouwekathedraal ノートルダム大聖堂Wapper 9-11, 2000 Antwerpen, BelgiumTel:+32(0)3 201 15 55開館時間:10:00~17:00 月曜休http://www.rubenshuis.beRubenshuisルーベンスハウス アントウェルペン中心部の広場「ハンドスクーンマルクト」にそびえるノートルダム大聖堂は、14世紀半ばから169年の時をかけて造られた市内最大の教会だ。123メートルの高さを誇る鐘楼は、「ベルギーとフランスの鐘楼群」のひとつとして、世界遺産に登録されている。 内部は壮麗なバロック空間が広がっているが、ここを訪れた日本人の多くが、ルーベンスの祭壇画《キリスト昇架》と《キリスト降架》を目指す。これらは『フランダースの犬』の主人公ネロ少年が一目見たいと憧れていた作品で、その前で愛犬パトラッシュとともに天に召されたエピソードとして書かれた。美術史的には、イタリアから帰国したルーベンスの、フランダースにおける出世作としても重要だ。古くから日本人観光客が訪れているためか、日本語表記の作品解説やパンフレットが、普通に用意されているのもうれしい。ルーベンスのアントウェルぺンバロックの巨匠ルーベンス、畢生の祭壇画フランドル絵画黄金期の画家のアトリエRubens & Antwerpen ピーテル1世が住んだアントウェルペンで、17世紀に活躍したルーベンス。1608年、イタリアから戻った彼は、この街の一等地に大規模な工房を持つ大邸宅を構えた。現在『ルーベンスハウス』として公開されている邸宅では、当時ヨーロッパ中の宮廷から注文が殺到していた売れっ子画家の、貴族のような生活ぶりを知ることができる。 ルーベンス自らデザインした邸宅は、イタリア・ルネサンスのパラッツォ風。吹き抜けとなった広いアトリエは、多くの弟子を効率的に使い、絵画を量産した現場である。彼が生涯で生み出した作品は数千とも言われるが、ルーヴル美術館の「ルーベンスの間」を飾る連作《マリー・ド・メディシスの生涯》をはじめ、多くの傑作・大作がこの工房で制作された。またルーベンスと共作したことが知られるピーテル1世の次男・ヤン1世の屋敷も近所にあり、公私共に親しく交流していたことが伺える。36

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