SIGNATURE 2018 1&2月号
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ブリューゲルは、中世の末期に大流行した諺を好んで描いている。《12のネーデルラントの諺》(1558年頃、上・部分)は、別々に描かれた12枚の木皿を17世紀に接合し、銘文が加えられたもの。右はピーテル1世も題材にしたヒエロニムス・ボス最晩年の作品《十字架を担うキリスト》の追随者による模倣作品。下:寓意を扱ったピーテル・ブリューゲル1世(下絵)、ピーテル・ファン・デル・ヘイデン(彫版)による版画《痩せた台所》。食卓の上のムール貝に手を伸ばす痩せこけた男たちが描かれ「貧困は怠惰の結末」という教訓が込められている。「大食の罪」を描いた《太った台所》(画面上)と対になった作品。ほかに《学校のロバ》などを収蔵。Vrijdagmarkt 22-23, 2000 Antwerpen, BelgiumTel:+32(0)3 221 14 50開館時間:10:00~17:00 月曜休http://www.museumplantinmoretus.beMuseum Plantin-Moretusプランタン・モレトゥス印刷博物館Lange Gasthuisstraat 19, 2000 Antwerpen, Belgium Tel:+32(0)3 338 81 88開館時間:10:00~17:00 月曜休www.museummayervandenbergh.beMuseum Mayer van den Berghマイヤー・ファン・デン・ベルフ美術館 美術品蒐集家であった貴族の個人コレクションを展示しているマイヤー・ファン・デン・ベルフ美術館。フリッツ・マイヤー・ファン・デン・ベルフは19世紀の人物だが、17世紀のフランドル絵画を熱心に蒐集した。しかしコレクションを始めて5年後の43歳の時、落馬事故で死亡。死後に母親によって建てられた邸宅がミュージアムとして公開されている。 金唐革を張った重厚な壁面に、何段にもわたって飾られているフランドル絵画の中で、とくに重要な作品は、ピーテル1世の《12のネーデルラントの諺》と《悪女フリート》。前者は12枚の木の皿それぞれにネーデルラントの諺を描いた作品で、制作から100年後に発見され、一つの画面にしつらえられた。フリートという女性が地獄で暴れまわる様を描いたとされる後者は、作者中期の代表作だが、現在は修復中。再公開は、2019年の予定である。稀代の美術品蒐集家の個人コレクションかつて世界の中心だった最古の活版印刷工房 16世紀中期より国際的に活躍した印刷・出版業者、クリストフ・プランタン。1555年に彼が設立し、娘婿のモレトゥスが引き継いで以降、300年にわたって一族が守り抜いた印刷工房兼邸宅が、プランタン・モレトゥス印刷博物館である。当時ヨーロッパ最大級の「知」の拠点だったプランタンの工房からは、彼の代だけで約1500点もの書籍が出版された。そのなかにはヘブライ語やラテン語など4つの言語で聖書を対訳した『多言語対訳聖書』、世界初の近代的な地図帳、オルテリウス編『地球の舞台』、16世紀ネーデルラントの旅行ガイド『全ネーデルラント地誌』など、貴重な文献が数多い。 世界最古の印刷機のある工房ほか、ここで印刷された膨大な書籍に学者や人文主義者の書簡類、そして家族の生活空間がそのまま残る同館は、当時の印刷業者の生活と仕事を今に伝えるものとして、2005年、世界文化遺産に登録された。文・木谷節子きんからかわ37
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