SIGNATURE 2018 1&2月号
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美食の地に飛来する 白フクロウ件によって左右されるが、マイナス20度を超える日が続くと凍結を始めるという。 一帯は氷と雪に覆われた白銀の世界となり、水しぶきによって岸壁には白鬚のような氷柱が連なり、周りの樹木や街灯に樹氷の花を咲かせる。そんな白銀の絶景を見ていると寒さも忘れる。と言いたいところだが、舞い上がる水しぶきが一瞬にしてダイヤモンドダストのように凍りつく外気温では、10分も眺めていたら凍えてしまいそうだ。この季節限定の美を楽しむには、万全な防寒対策が必須となる。 そして冬本番を迎えるこの季節は、北極圏から越冬のために飛来してくる美しい鳥がいる。映画『ハリー・ポッター』で人気を博した白フクロウがやってくるのだ。 オンタリオ湖北東部の湖岸に突き出た「PEC」の愛称で親しまれるプリンス・エドワード・カウンティは、その名から察するように、18世紀にアメリカ独立に反対する英国王党派「ロイヤリスト」たちが、独立戦争後にアメリカから移り住み農地開拓をした。牧草地や果樹園、小さな教会といった牧歌的風景と、当時のヴィクトリア朝の建物の町が点在する、穏やかな空気に包まれた美しい土地だ。緑豊かなこの地は、別名「ガーデン・カウンティ」とも呼ばれ、滋味豊かな食材の宝庫でもある。小規模ながら、現在50ものワイナリーが優れたワインを造り出している。一帯の土壌はブルゴーニュの有名なコート・ド・ボーヌ地方の土壌と下層が似ており、シャルドネとピノ・ノワールはこの地域で特に成功している。 そんなポテンシャルの高いこの土地は、トロントをはじめとした都市部の御用達食材地となっている。プリンス・エドワード・カウンティには、ロイヤリストが移住して築いた、昔ながらの素朴な景観が随所に残されている。伝統的なたたずまいを残す小さな町々には、ショップやレストランも点在しており散策も楽しい。レストランやワイナリーなど、地元の味を満喫できる店を「テイスト・トレイル」というルートで結び、カナダの中でも美食街道として認知度が高まっている。52
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