SIGNATURE 2018 1&2月号
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 じつは『きたうら善漁。』でダイナースクラブの食事会を開く前々日、『すきやばし次郎』の小野二郎さんと『きたうら善漁。』を訪れ、ご主人・吉田善兵衛さんの、ひたすら、素材に忠実な、善兵衛さん曰く「ただ理を料っただけ」の地の野菜、魚、肉料理を楽しみました。それを「真剣」に召し上がっていただける方のために用意したというカウンター席でいただきました。 二郎さんがすべての料理を綺麗にみごとに召し上がられた後、刺身の「かつお」に触れ、「まず、こんな、赤身じゃない淡い色をしたかつおを見たのは初めてです。味もかつおの味が出てくる前の味で、生まれて初めていただきました、きっと漁法から違うのかもしれません」。 二郎さんが召し上がられた料理と同じコースメニューをダイナースクラブの会員の皆様6名と私でわずか7席のカウンター席を貸し切っていただくという、なんとも贅沢で稀有な食事会でした。3日目の「江戸前鮨イベント」では、江戸ではない場所で店を構える3人が腕を競った。延岡の新鮮なすし種と本わさびで握られた鮨をいただけたラッキーな参加者の頬は、緩むばかりだった。何ができるだろうか、を考えることが大切で、まだまだ、やれることはあると思う」とおっしゃいました。92歳のすし職人のこの発言に会場は拍手喝采で、沸きに沸きました。 もう一つのテーマは「食料廃棄」です。マッシモがパルミジャーノの故郷の大地震をきっかけに、売り物にならなくなったチーズでスープを作り、ホームレスの方たちにふるまったことはつとに有名ですが、その話から、現代のフードロスに料理人たちは真剣に取り組まなくてはならないと熱弁をふるいました。 二郎さんも子供のころの奉公先での、客の残りものを再利用して福神漬けを作り、お勝手での食事の糧にしていたことを話されました。この「もったいない精神」が今ではなくなってしまったことを残念に思うと語りました。世界の最前線にいるとはいえ、国籍も年齢も違う二人が意気投合した対談は、世界に『きたうら善漁。』で知る、延岡の魅力ぜんりょうまる山本氏が心酔する延岡の名店『きたうら善漁。』でダイナースクラブ マスヒロ塾の番外編がイベント期間中に開催されました。『きたうら善漁。』を通じて知る、延岡の魅力とは?発信しうる価値が十分にある内容ではなかったでしょうか。 じつは「のべおか国際食卓会議」に先駆け、延岡市では「本わさび革命」として、市内の飲食店にぜひとも「本わさび」を使いましょうと働きかけています。 どんなに魚介の鮮度が抜群で質が高くとも、それに添えたわさびが本物でなかったら、刺身の価値はなくなってしまいます。延岡市では「地元の魚を誇るより、本わさびで魚に敬意を払いましょう」という運動を全国に先駆け始めたわけです。今では、これに賛同した市内の30軒以上の飲食店が店頭に「本わさび革命」の幟を立てて、おろし立ての本わさびを使って調理しています。 二郎さんがステージで力説しました。「一本1万円もするわけではないですから、刺身を一切れ少なくしても、本わさびを使ってほしいです。もし、本わさびがなかったら、私は鮨を握りません」とまでおっしゃいました。 その実践編が3日目の「江戸前鮨イベント」でした。本物のわさびで握られたにぎり鮨がどれほど美味しいものかを実感していただく食事会です。「江戸前」とはすし種にひと仕事してあるにぎり鮨のことで、群馬・館林『鮨恵三』の萩原裕司さん、石川・金沢『鮨 木場谷』の木場谷光洋さん、宮崎『一心鮨 光洋』の木宮一洋さんの3人による「江戸前鮨バトル」。2人が4貫ずつを3人の組み合わせを替えて握る鮨を、各回50名の方が楽しみました。この「江戸前鮨イベント」のチケットがいち早くあっという間に売り切れたそうです。 「のべおか国際食卓会議」が2018年度以降も続くようでしたら、2020年のオリンピックイヤーに延岡で「SUSHIリンピック」を開きたいと思います。columnことわりはか日本の食文化を応援します。きばたにめぐみのぼり65

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