地人球ゴージャスプロデュース公演15作目に、作・演出を手がける岸谷五朗は、「ZEROTOPIA」というタイトルを付けた。「もう一度ゼロのところに立ち返って作品づくりをしたいという思いがあった」と岸谷は言う。 「寺脇康文と地球ゴージャスを結成して、1本目に作った作品は、200人ほどが入る多目的空間を借りて、舞台から客席、入口まで自分たちで造り上げて上演したんです。あのときのように何もないところからスタートするということを、エンターテインメントで描けないだろうか。それが今回の物語の出発点になっているんです」 大まかなあらすじはこうだ。豪華客船が海に沈み、生き残った人間たちがある島に流れ着いた。そこは地図にも載っていない何もない島。島をさまよううちに、人々は出会い、それぞれの隠された過去がむき出しになっていき、そして知ることになる。船が沈み、この面々が島に流れ着いたのは、すべて仕組まれたことだったのだと。 「彼らがなぜその島に集められたのかという謎解きは、物語のなかでなされていくんですが。それとともに、何もない島に放り込まれた登場人物たちがそこでどう生きて、どう関わっていくかによって、そのゼロの世界がユートピアにもディストピアにもなり得るということを描いていくつもりです。自分自身が50歳を過ぎて、出会いがさらに大事だと思えるようになってきたこともあって。人との交わりにちょっとこだわって書いてみようと思ってるんですね」 その岸谷の思いには寺脇も大いに共感するところがある。 「僕も今55歳で、死というものが現実味を帯びてくる年齢になり、だからこそどんな人と一緒にいて、どんな仕事をし、どういう生き方をするかっていうことが大事になってきている。まさに五朗ちゃんと同じようなことを考えていましたね」 毎回、出来上がりを待つことになる岸谷の台本についても、理解を示す。 「僕らの作っているものには、必ず『いかに生きるか』というテーマがあって、それがあるからこその芝居づくりなんですね。そういう意味では、時代の流れや世界の情勢と切り離すことはできないですし、世界がどう変わるかわからないから、書くのが遅くなっちゃうと思うんですよ。制作陣が早く書いてほしいというのもわかりますけどね(笑)。でも僕としては、五朗が今この世界に何を感じているかっていうことを大事にしてほしいですし、面白いものになるのは間違いないですから。許される限り時間を使ってほしいなと思ってるんです」 そのテーマを、ただ押し付けるのではなno.岸谷五朗80Goro KISHITANI & Yasufumi TERAWAKIきしたに ごろう|1964年、東京都生まれ。83年、三宅裕司が主宰する劇団『スーパー・エキセントリック・シアター』に入団。87年、同劇団の寺脇康文らとともにユニット「SET隊(せったい)」を結成し、ラジオドラマやコントなどで活動。94年退団し、寺脇と企画ユニット「地球ゴージャス」を結成。舞台公演の企画・脚本・出演する以外にも、映像作品に多数参加。てらわき やすふみ|1962年、大阪府生まれ。84年、劇団『スーパー・エキセントリック・シアター』に入団。94年、同時に退団した岸谷とともに「地球ゴージャス」を結成。舞台や映画、テレビドラマなど活動の場を広げる。96年、TBS系『王様のブランチ』の初代司会者を務め、2008年のテレビ朝日系列のドラマ『相棒』では、水谷豊の初代相棒役で知られる。公式ウェブサイト https://www.chikyu-gorgeous.jp12SignatureInterviewいい大人は、より大きな野望と夢をもつことで肉体の衰えと反比例して大きくなっていく
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