SIGNATURE 2018 3月号
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ほんと 髙田「雄大なカルデラと広がる大きな空に、心が洗われました」遺産登録されているが、その一つがこの三角西港なのである。 とはいえ、行定監督にとっては、幼少の頃から父と一緒に釣りに来ていた〝遊び場〞。「夏ですと、昼から夜までかければアジが200匹くらい釣れました。クーラーボックスがパンパンになるまで釣りをしたんです。食べきれない魚は、甘露煮にして無駄にしませんでした」。 三角西港から天草五橋を渡れば、そこは天草。ランチを済ませ、一行は天草名物の天然塩を買おうと、あるお店に。そこにポスターが貼られているのを、行定監督が目ざとく見つけた。「えー『天草シネマパラダイス』はこの近くなんだ! ぜひ行きましょう」と賢三さんの腕を引っ張っていった。辿りついた場所は、昭和の匂いが濃厚に漂うビル。その奥に進むと、110席あまりというレトロな赤いベロア張りシートの映画館が現れた。天草唯一の映画館である『本渡第一映劇』だ。行定作品も多数上映していたが、監督自身は訪れたことがなかったのだ。その存在感は東京へも轟き、噂を聞いた俳優の高倉健さん、宮沢りえさんも訪れたことがあるのだという。 じつは撮影後の食事会で、「賢三さんのことを映画に残すべきだ」と、行定監督からの熱烈オファーもあった。賢三さんと行定監督を結びつけた〝映画〞という太い水脈は、熊本の地で最後まで二人の間を流れていたようだ。31行定監督のご自宅のすぐそばという「白川水源」にて、湧き水を飲む賢三さん。水の国の豊かさを実感する。「心が洗われる場所です」と賢三さんは感心することしきりのご様子だった。大観峰から阿蘇五岳を望む、左の根子岳が顔で、右側に胸、腰と続く「涅槃像」だとされる。手前のカルデラには、行定監督のご両親も生活しているそう。

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