SIGNATURE 2018 3月号
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「賢 髙田「見たことも食べたこともない素材ばかりでした。大地の恵みを感じます」三さんから受けたご恩は、一生をかけて返します。今回の旅も、少しでも恩返しの旅にしたいです」 そう語るのは、パリのバスティーユにあった髙田賢三邸において、2002年から住み込みで専属料理人を7年にわたって務めた、中山豊光シェフ。 熊本市から25キロほど北にある菊池市の出身。賢三さんとの出会いは、パリの日本料理店『伊勢』だという。「当時の僕は、話しかけることもできませんでしたが、ある時ピンチヒッターでご自宅の料理をお手伝いしたのです。それをきっかけに目をかけていただき、専属料理人になりました。賢三さんに学んだことは、ノープランではダメなこと。必ず答えを用意しておく。料理人だからわかりません、は許されず、聞かれたことには必ず答えを出さなければいけませんでした。本気のダメ出しが何度もありましたが、それが今の自分の骨格を作ってくれました」。 今回の旅の目的は、賢三さんをもてなすことに加えて、自身が3月に日比谷にオープンさせるレストランの食材探しだ。故郷の街や、食材に触れてもらうことで、東京進出の準備が整っていることも知らせたかったそう。 「彼のすごいところは、繊細な素材選びでシンプルに調理するところ。びっくりするのは、一度招いたお客様の好みをすべて記憶していること。あの人はこれは食べない、あれがお好き、というのを10年経っても覚えているプロ。そんなこともあって、彼のお料理はお客さんからとても喜んでいただいてい34天草下島の『天草フーズ』で東京のレストランで出す海産物を下見。1キロを超える大きな伊勢海老や、車海老を前に、賢三さんにメニューの構想を語る中山シェフ。阿蘇を挟んで大観峰の反対側にある高森田楽保存会にて、炭火で炙った地元名産の「つるのこ芋」やヤマメをいただく。「正座は久しぶりで足が痛い」と賢三さんは苦笑いしながら、鎌倉時代から続くという伝統の料理を堪能していた。

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