髙田「豊かな土地で育まれた熊本の人たちの優しさに触れた旅でした」も、顔をよく知らず、顔から上が影のままでした。それがパリに行って、賢三さんに料理を作ることができた。さらに、僕の故郷に来てくれる……。夢が叶いました」 訪れたのは、『ナポリピッツァ研究所/イルフォルノドーロ』。地元の小麦粉、トマト、自家製のモッツァレラチーズを使い、自作の薪窯で500度の高温で焼き上げたピッツァは、東京からはるばる食べにくる人もいるそう。研究熱心なオーナーシェフ原田将和さんには、中山さんも一目置いている。「イタリアンは久しぶり」という賢三さんも、満足そうにナイフとフォークを動かしていた。 すると、ここで中山シェフの母上とお兄さんがサプライズで登場。菊池市長の江頭実さんも、賢三さんへの挨拶に出向いてくれた。「賢三さん、息子が調子に乗って天狗にならないようにしてください」と、お母さん。「冷や汗が出た」と、シェフも苦笑い。 大観峰を見た後に一行がたどり着いたのが「高森田楽保存会」。築130年の建物で、囲炉裏を囲んで炭火でいただく田楽味噌だ。それは、鎌倉時代から続くお祭りの時に振る舞われる料理。炭火の炎を見て、皆の心が和んだせいか、昔話に花が咲いた。監督もシェフも、1980年代前半に、賢三さんの手がけた『KENZOHOMME』のダブルのスーツを購入していたのだ。監督にいたっては、いまだにタンスにしまってあるほど。熊本は九州一のおしゃれ好きの街だが、ここにもうき 36上:丸尾焼窯元にて、絵付けをする賢三さん。トレードマークの花を選ぶ際にも妥協することなく中山シェフと相談をしていた。左:熊本で最も早く出荷されるという「高砂レンコン」の収穫の様子を見学した後、海沿いの宇城市の「肥後あゆみの会」澤村輝彦代表のオーガニックトマト農園で、しばしの野菜談議。賢三さんを送り出した後は、JR九州の観光列車「特急 かわせみ やませみ」に乗って、しばしの列車旅。熊本―人吉間を1日3往復する人気の列車は、球磨焼酎や地ビールも楽しめる。
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