SIGNATURE 2018 3月号
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eche 三つ子の胃袋も、百までお米のアイスキャンディ古代文明からの食卓の主役、コーン rroz con l  伝説によれば、メキシコ先住民族として知られるマヤ人たちは、黄色と白のコーンから生まれたという。それだけ、コーンはメキシコ人たちの暮らしに密接で、食卓にも必要不可欠な食物だ。第一、コーンの粉の薄焼きパン「トルティーヤ」がなければ、食事は始まらない。 赤ちゃんたちも離乳食中期に入れば、トルティーヤをしゃぶりだす。小麦粉アレルギーを懸念し、フラワー・トルティーヤ(小麦粉原料。メキシコ北部で主流)ではなく、コーン・トルティーヤ(中部・南部で主流)からスタートする家族も少なくないという。メキシコではどんな小さな村でも、「トルティレリア」というトルティーヤ専門店があり、その日に作られたフレッシュなトルティーヤが売られている。3歳のカイ君もコーン・トルティーヤが大好物で、辛くない子ども用エンチラーダとタコスをペロリ。ちなみに、辛さは5歳から徐々に慣れさせるという。 デザートには、大きなアップルマンゴー。一年中果物が豊富なメキシコでは、マンゴーなどの果物が立派な離乳食。南部では、とりわけトロピカルフルーツのピューレが赤ちゃんたちの最初の離乳食になるという。月齢5〜6か月ぐらいから、野菜系ピューレと同時にフルーツピューレを勧める栄養士も少なくないらしい。日本では「体を冷やす」「酵素が多い」「アレルギーが心配」と避けられる傾向にある南国フルーツだが、身土不二という言葉のとおり、その土地の子は早くから体内に入れていくようだ。 「メキシコは日本の5倍の国土があるから、北と南では離乳食・幼児食も違ってくる。マンゴーのあげすぎはお腹が緩みがちに。グアバは便秘になりやすいので注意してるよ」と、カイ君のパパ。しんどふじ文・にむらじゅんこにむらじゅんこ|ライター、翻訳家、比較文学研究者、1児の母。長年のフランス暮らし、モロッコ通い、上海暮らしなどを経て、現在、鹿児島大学講師。著書に『クスクスの謎』(平凡社新書)、近著には『海賊史観からみた世界史の再構築――交易と情報流通の現在を問い直す』(稲賀繁美編、思文閣出版、共著)などがある。 その日のカイ君のおやつは、メキシコの代表的なデザート、ミルクで煮た甘いお米(アロス・コン・レーチェ)だった。日本人には、ミルクとお米という組み合わせが苦手という方も多いかもしれないが、食べてみるとお米のモチモチ感が癖になる。 甘いお米といえば、オルチャタという甘いドリンクもあるが、これも、ミルク+お米(生の米をミキサーで砕いた粉、あるいは煮潰したお米を使用)がベースとなっていて、子供から大人まで幅広く飲まれている。スペインのオルチャタはチュファという植物を使うが、メキシコのものはお米で作られるそう。 カイ君のパパは、甘いお米の味を「幼少期を思い出させる味なんだ」と語る。子供の頃、お米のアイスキャンディ(パレタス・デ・アロス)が大好物だったという。試食してみると、凍った米粒の食感が斬新。だが、やはり、どこか日本人にとって懐かしい不思議な味がする(ミルクと渾然一体となった甘い米のとぎ汁とでも形容すべきだろうか)。想像よりもずっと美味しく、一緒に煮られた練乳とシナモンとの相性もいい。メキシコでは、あちこちにパレテリア(アイスキャンディ屋)があるが、このお米のアイスキャンディも定番のひとつなのだとか。 子供たちが美味しそうに食べているのを見て、その昔、日本で、母乳の代用として米のとぎ汁が与えられていたことを思い出した。Tortilla & A42

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