SIGNATURE 2018 3月号
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人はさまざま。人のさだめもその歩みもまたさまざま。さまざまななかに、さまざまな計が立てられる。そんななかでも大事なことは、ことしは去年のままであってはならないということ、きょうは昨日のままであってはならないということ、そして明日はきょうのままであってはならないということである。万物は日に新た。人の営みもまた、天地とともに日に新たでなければならない。憂き事の感慨はしばしにとどめ、去りし日の喜びは、これをさらに大きな喜びに変えよう。立ちどまってはならない。きょうの営みの上に明日の工夫を、明日の工夫の上に、あさっての新たな思いを。そんな新鮮な心を持ちつづけたい。そんな思いで、この日この朝を迎えたい。松下幸之助「この日この朝」より「日に新た」Better Life, ABetter W となく、今を導いている。創業者である幸之助が打ち出した経営理念を、て、「提供価値の革新」と「お客様とのつながり強化」という2つの観点から、次の100年を目指して新たな挑戦が始まっている。 パナソニックの宮部義幸専務執行役員は、「創業者のたくさんの言葉に、今の経営も支えられています。不思議と今の状況にあった言葉が必ずあります」と語る。過去の苦境の中で、「2011年と12年の経営不振の際には、経営理念以外をすべてリセットしてやり直しを行いました。何度も変革はありましたが、創業者の経営理念だけは変えてはいません。それは、経営理念が判断軸であり、我々の拠り所だからです。これは、不変の財産なのです」。そう語った宮部氏の表情には、一点の曇りもない、自信と誇りに満ちあふれていた。そして、宮部氏は、すでに次の100年を見ていた。 「これまでの100年は工業化社会。優れたやり方で、この社会に対応してきたと思います。会社は、次の新しい社会に向けて、もう一度会社を起こすくらいの気概を持った人がいないと続きません。変化を起こせる人材が必要だと考えています。起業家精神、実行力を持った人が必要。一人一人が経営者という意識を持つことが大事なのではないでしょうか。現代の言葉に置き換えたのが、“Aorld社外との共創活動などを通して、自ら企画・実行でき、時代を作る人を育てていくことが大事だと考えてい”。そします」 まさに幸之助が残した、「経営の基礎は人である」の言葉だ。また、創業者の言葉でよく使うのが「日に新た」だという。「日々変化し続ける会社こそが長く活躍できます。すべての社員が日々少しずつ変化することで、会社も世の中に貢献できます。世の中で役立ったという結果が利益だと考えています。世の中が求めているものと会社が提供するものがマッチしなければ、利益は出ないからです」。 幸之助の精神は今も生き続けている。2017年、パナソニックは、『フォーブス』誌の「グローバル2000ランキング」で、「世界で最も評価されている企業ランキング」トップ10に選ばれた。世界から、ますます注目を浴びている。パナソニック株式会社 専務執行役員CTO宮部義幸みやべ よしゆき | 1957年大阪府生まれ。83年、 松下電器産業(現パナソニック)に入社。 本社研究所でワークステーション、 衛星デジタル放送システムなどの開発に従事。2011年に技術担当役員、14年にAVCネットワークス社社長に就任。 17年6月より現職。47幸之助が制定した経営理念の七精神(遵奉すべき精神)が、朝礼時に世界の各部署で読み上げられる。こうして創業者の思いは、連綿と伝わっている。

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