SIGNATURE 2018 4月号
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CSignatureこうがい創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年特別展20《見返り美人図》菱川師宣筆江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵髪形は貞享年間(1684~88年)に流行した「玉結び」で、垂らした髪の結び目に鼈甲の櫛や笄を挿している。後ろ腰には女帯が長く、幅広くなり始める延宝年間(1673~81年)に流行したという「吉弥結び」を結ぶ。顔立ちが美しいだけでなく、最新のファッションで身を飾っている。会期 : 2018年4月13日(金)~5月27日(日)会場 : 東京国立博物館 平成館 [上野公園]開館時間 : 9:30~17:00※金・土曜は21:00、日曜・祝日は18:00まで※入館は閉館の30分前まで(前期展示=4月13日~5月6日、後期展示=5月8日~27日)アクセス : JR上野駅公園口から徒歩10分東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅から徒歩15分はしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 休館日 : 月曜 ※ただし 4月30日(月・休)は開館お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)展覧会公式サイトhttp://meisaku2018.jp/国宝《風俗図屛風 (彦根屏風) 》江戸時代・17世紀 滋賀・彦根城博物館蔵【展示期間:5月15日~27日】さん覧会場で仰ぎ見ているのだ。 そんな作品同士のつながりを浮かび上がらせる展示の中から、1組だけ誌上でご紹介しよう。戦争、略奪、誘拐、逃散などが頻発する過酷な戦国時代=「憂き」世が終結し、天下統一によって徳川の平和が出現した近世初期、人々の生きる世界は「浮き」世に変じた。国内外から集まった珍しい商品を売り買いする商人たち、寺社へ参詣する人々、芸能に熱狂する群衆、遊郭を彩る女たちに、大路を行く貴人の列……。浮き世の光景を活写した絵は、まず洛外に多い寺社などの名所を舞台とする名所遊楽図として生まれ、江戸時代に入るとちょう室内を描いた室内遊楽図、季節と無縁の遊楽人物図などが登場、やがて単独の人物を描く美人や舞台上の役者を取り上げた「浮世絵」へとつながっていく。《風俗図屏風》に群れ集う遊女たちはやがて、菱川師宣の《見返り美人》のように「ソロ」で描かれるようになり、木版多色刷りの「錦絵」黄金期に至るとついに、喜多川歌麿を筆頭とする浮世絵師たちによって、浮世絵を代表するジャンル「美人画」が確立するのである。olumnText by Mari Hashimoto日本美術の冒険 第42回文・橋本麻里 展覧会の冒頭に「創刊記念『國華』130周年」とあるが、『國華』とは、明治22年(1889年)に岡倉天心らが中心となって創刊した日本・東洋美術研究誌で、現在まで発行を継続している中で日本最古となる雑誌のこと。「つながる日本美術」というタイトルにもあるとおり、「名作」と呼ばれる作品は、単独で生まれてきたわけではない。その先駆けとなる多くの作品があり、また「名作」の影響を受け、あるいはそれを超えようとつくられた作品が後に連なってゆく。その、あたかも巨大な系統樹のような作品同士の関係の間に屹立する高峰を、私たちは「名作」として、展「名作誕生 つながる日本美術」2Art新しい名作の誕生へつながる、名作誕生のドラマ
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