SIGNATURE 2018 4月号
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設立からわずか21年。カタール航空はナショナル・フラッグ・キャリアの中でも若い航空会社だということができる。しかしながら、その短い期間に最新の機体を次々と導入し、現在所有する機材はおよそ200機。6大陸150都市以上に及ぶネットワークを確立している。その躍進ぶりには目を見張るばかりだが、カタール航空が業界に一石を投じたといわれるのは、ビジネスクラスにおけるサービスの斬新なアイデアからだった。 お好きな時にお好きなものを――今でこそ、スタンダードになりつつあるアラカルトでオーダーするスタイルのダイニングサービスは、かなり早い時期にカタール航空が導入していたもの。ワゴンで運ぶのではなく、一皿ずつ、トレイに載せて。A350、B787の機材では、ビジネスクラスでもスリープウェアが準備され、イタリア・フェレッティ社の快適なリネンでベッドメイキングを施すのが標準仕様。これだけパーソナライズされたサービスは、ラグジュアリー化の進む競合の中でも群を抜いている。 クオリティの高さは、数々の受賞歴でも証明されている。イギリスの国際運輸調査機関スカイトラックス社の調査では、最高ランクの5つ星認定エアラインの栄誉を授与され、また2017年には世界ランク1位となる「エアライン・オブ・ザ・イヤー」に選定された。この賞は、乗客の満足度調査より選ばれることから「パッセンジャーズ・チョイス」とも呼ばれ、まさに〝サービス〞が評価された結果なのだ。ちなみに、「エアライン・オブ・ザ・イヤー」は、2011年、2012年、2015年に続き、4度目の受賞だ。本拠地であるドーハのハマド国際空港は、世界で5社にしか与えられていないという稀少な5つ星を獲得している。 1万平方メートルという広さを誇る、アル・ムルジャンビジネスクラスラウンジを訪れた時のこと。惜しげもなく並べられたB&Bの椅子やまるで池のような噴水エリアなど、ラウンジという括りではお目にかかったことのない光景に感嘆のため息を漏らしていると、案内のスタッフが教えてくれた。 「あまりに広いので、ラウンジの中で『ラウンジはどこですか?』と聞かれることがよくあるんですよ」 カタール航空が考えるサービスとは、先を行くだけでなく、常識を覆すものでもあるらしい。 2017年に発表され、順次導入が始まっている新ビジネスクラスのシートの特徴は、なんとダブルベッド。「Qスイート」と名づけられたスペースは、隣接する2席を繋げてダブルベッドにすることができ、パーティションを調整すれば、計4人が向かい合って座ることも可能。家族連れなら、機上で家族団らんの場が成立してしまうのだ。ちなみに、特許を取得したこの仕様はあまりに革新的で、導入前に表彰を受けるほど注目を集めている。 旅には意外性が必要だというけれど、意外性のある旅には、もはやカタール航空が欠かせないのかもしれない。 44お問い合わせ:カタール航空 https://www.qatarairways.comチェックインを済ませて中に入ると、まず目に飛び込んでくるのがまるで池のような水のオブジェ。その横には螺旋階段が優雅に弧を描き、まるで5つ星リゾートへと足を踏み入れたかのような錯覚にとらわれる。本拠地ドーハの、アル・ムルジャン ビジネスクラスラウンジは、すべてが概念破りだ。半個室のファミリールームや仮眠が取れるクワイエットエリアなど、寛ぎの動線は多岐にわたり、ダイニングに腰を下ろせば、スタッフが恭しく食事のオーダーを取りに来てくれるといった具合。望む快適さが満たされれば、それは満足になるが、予想を上回るサービスは、幸福になることを知る。日本路線(羽田・成田)を運航する機材は最新のA350機とB777機。ビジネスクラスでもスリープウェアがついており、客室乗務員によるベッドメイキングサービスの提供がある。フェレッティ社製リネンの寝心地は極上。文・小野綾子Text by Ryoko ONOドーハ、ラウンジの居心地ビジネスクラスのスタンダードを牽引するエアライン近年、エアラインのサービスは機上、地上共に激変している。移動のストレスを快適に変えるため、あるいは移動手段すら旅の重要なファクターとなるように。一歩先の快適さで常識を塗り替えるカタール航空、そのもてなしとは。QATAR AIRWAYSカタール航空
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