上隈研吾建築都市設計事務所《梼原・木橋ミュージアム》2010年 高知 写真:太田拓実下伝千利休《国宝・待庵》安土桃山時代(16世紀)/2018年(原寸再現)制作:ものつくり大学 ※参考図版CSignature20「木造」セクションでは、日本の気候風土が育んだ木造技術を詳解する、伝統建築の精巧な学術模型から、本展のために制作された最新プロジェクトまでを展示。和釘の作製から、実物の〈待庵〉を参考に、竹の節の位置まで合わせながら、千利休が〈待庵〉で何を実現しようとしたのかを探る原寸モデルは、入室も可能。会期 : 2018年4月25日(水)~9月17日(月・祝)会場 : 森美術館 [六本木ヒルズ森タワー53階]開館時間 : 10:00~22:00 (火曜は17:00まで)※いずれも入館は閉館の30分前まで*会期中無休お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)森美術館ウェブサイト www.mori.art.museumはしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 て編集する。 展示物として興味深いのは、 千利休による茶室〈待庵〉の原寸モデルだろう。 昨年、 国立新美術館での「安藤忠雄展─挑戦─」が、 美術館の敷地に〈光の教会〉を原寸サイズで再現して話題を呼んだように、 写真や模型、図面に偏りがちな建築展に、 建築の本来的な意義である空間体験をもたらす展示物は、近年欠かせないものになっている。 今展では、 『ものつくり大学』 が制作を請け負い、 20名以上の学生と7名の教職員、 7名の非常勤講師(職人)によって、 素材から技法にいたるまで、現物に忠実な 〈待庵〉 原寸モデルが造たいあんられた。 またこのモデルは観客が実際に内部へ入り、 極小の二畳という茶室空間を体感することもできる。 さらに丹下健三が、 桂離宮などを再解釈して設計した〈自邸〉(現存せず)を3分の1のスケールで再現した巨大模型、 剣持勇や長大作らの名作家具のオリジナルを、 実際に使用することのできるラウンジを設えるなど、 「見る」だけではない、 体験を随所に盛り込みながら、 日本の建築文化への理解を深められる構成が志向されている。しつらolumnText by Mari Hashimoto日本美術の冒険 第43回文・橋本麻里 森美術館開館15周年、 「明治150年」を意識して企画された、 同館では7年ぶりとなる建築展。 日本の近現代建築について、その中に伏流する古建築や古美術、 伝統技術などを明らかにしながら紹介し、 日本建築の可能性を探ろうというものだ。 とはいえ 「日本らしさ」 とひとくくりにできるほど、 日本文化も日本建築も単純ではない。 会場には 「可能性としての木造」 「安らかなる屋根」 「建築としての工芸」 「連なる空間」 「共生する自然」 など9つのセクションを設け、 近現代建築と伝統建築をつなぐコンセプトや技術・形態などを抽出し建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの2Art世界が注目する日本建築の遺伝子を読み解く
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