CSignature20大作の印象が強い雪舟《山水長巻》でさえ16メートルであるのに比して、大観の《生々流転》は約40メートルという破格のサイズ。特定の物語や場所とは関係なく、木々の葉を濡らした滴が、集まって渓流となり、大海へと注ぎ、湧き起こった暗雲の間から龍が飛翔するという、大自然と水の循環を描く。重要文化財《生々流転》1923年(大正12年)絹本墨画 東京国立近代美術館蔵*全長40メートル超。日本一長い画巻に水の一生の物語を描く。 上の2点は巻頭と巻末の部分図。下が全図。*京都展は巻き替えあり。せいせいるてん 休館日 : 月曜お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)公式ウェブサイト http://taikan2018.exhn.jp生誕150年【東京展】会期 : 2018年5月27日(日)まで会場 : 東京国立近代美術館[東京・北の丸公園]開館時間 : 10:00~17:00(金・土曜は20:00まで)※入館は閉館の30分前まではしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 【京都展】会期 : 2018年6月8日(金)~7月22日(日)会場 : 京都国立近代美術館 [京都市左京区岡崎円勝寺町26-1]開館時間 : 9:30~17:00 ※6月8日~30日の金・土曜は20:00まで、 7月6日~21日の金・土曜は21:00まで休館日 : 月曜(7月16日[月・祝]は開館、翌17日休館)お問い合わせ 075-761-9900(テレホンサービス)※入館は閉館の30分前までもっせんさいが画家こそ、 横山大観だ。 明治維新の年、 水戸藩士の子として生まれた大観こと酒井秀麿は、 明治22年(1889年)、 日本の伝統を見直すべく、 アーネスト・フェノロサ、 岡倉天心らの尽力によって設立された東京美術学校に、 第1期生として入学。 母校に職を得るも、 師である天心に従って野に下り、 天心が新たに創設した日本美術院に参加、 日本画の近代化を目指す。 その過程で、 「空気を描けないか」という師の言葉に、 下村観山、 菱田春草らと没線彩画の新手法に取り組む一方、 琳派を模範として色彩研究も進めた。 結果として、 《夜桜》 《生々流転》をはじめ、 江戸時代の琳派だけでなく、 やまと絵の伝統も重視、 欧米人の目から見て「これぞ日本だ」と理解されやすく、 日本人の目にも快い、 親しみ深い近代日本画を完成させることになる。 今展では、 全長40メートル超で日本一長い画巻 《生々流転》(重要文化財)や 《夜桜》 《紅葉》 をはじめとする代表作に、 数々の新出作品や習作などの資料も合わせた約90点によって、 生涯が近代日本画の歩みそのものと重なった“国民作家”大観の全貌を俯瞰する。olumnText by Mari Hashimoto日本美術の冒険 第44回文・橋本麻里 近代日本の絵画には、 日本画、 洋画というふたつのジャンルが存在するが、 江戸時代以前の日本に 「日本画」 という言葉はない。 実はこれは、 明治に西洋の文物が流入してきた時、 西洋画(油画)と自分たちの絵をはっきり区別するための呼称として成立したものなのだ。 またこの時期、 近代国家による国威発揚の場となっていた万国博覧会で、 日本画をはじめとする日本の美術は、 ファインアートではなく 「装飾」 と見なされた。 こうした状況下、 西欧諸国に伍して日本の文物を 「美術」 と主張するための、 教育制度や技法が整えられていくが、 その流れの中心にいた横山大観展2Art“オール大観”--代表作を網羅した 10年ぶりの生誕記念大回顧展
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