SIGNATURE 2018年 6月号
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眺めのよいホテルめ = パリは美しい。初めてパリに降り立った人はもちろん、何度もこの街を訪れた人も、きっと思うだろう。この街はなんてきれいなのだろう、と。 この美しさは19世紀後半以降に出来上がったものだ。18世紀後半のフランス革命や19世紀前半のパリ蜂起の頃のパリは、迷路のような小道が交錯し、混沌や猥雑さが支配していた。そんな混沌とした街路の特徴が、それらの革命や暴動に有利に働いたのは言うまでもない。ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』やゾラの『居酒屋』などに描写されるパリは、こんな光景なのだろう。 そんな状況で、生活環境も劣悪だったパリの街を一新して近代都市にしよう、というナポレオン3世の意を受けて取り組んだのが、1853〜70年にパリを含むセーヌ県知事を務めたジョルジュ・オスマンだった。 凱旋門から延びる広々としたシャンゼリゼや、その他の大通り。ルーヴル美術館とオペラ座を結ぶオペラ通り。いかにもパリらしい、高さがそろった壮麗な建物群……。時を同じくして、パリで開催された4度の万国博覧会。その度に、エッフェル塔、トロカデロ、グラン・パレといった、今のパリの象徴になっているモニュメントも続々建造され、この街は、世界で一番美しいと謳われる都市にその姿を変えていったのだ。 この街を歩いて、その美しさを愛でるのもいいが、次のパリ滞在は、そんな風景や街並みを、ホテルの部屋から独り占めするのはいかがだろう?部屋からとっておきの景色を愛でられる、ラグジュアリーなホテルを紹介しよう。 あなたがかつてパリに滞在した時に、そこから楽しめる眺望に感動したのはどこだろう||緑美しいチュイルリー公園からルーヴル美術館までを眼下に望む老舗名門『ル・ムーリス』? 美しい並木とブティックが整然と立ち並ぶモンテーニュ大通りが目の前に広がるシックな『プラザ・アテネ』? 手を伸ばせばセーヌ川越しのエッフェル塔に届きそうなエレガントな『シャングリパリ』? シャンゼリゼ大通りを真下に、7月14日のパレードを見るのにも最高な『ホテルバリエールルフーケッツパリ』? 優美なオペラ座を真向かいから見下ろせる『ル・グランドテル』? 話はちょっとそれるが、パリの、〝眺めのよいレストラン〞を紹介しよう。一番有名なところでは、1582年創業の歴史を誇る『ラ・トゥール・ダルジャン』。ここは6階に位置する客席から、ノートルダム大聖堂の繊細で優美な姿が目前に広がる。夏の夕暮れ、西日を背景にした大聖堂の美しさは格別だ。エッフェル塔2階にアラン・デュカスが造った『ル・ジュール・ヴェルヌ』も、エッフェル塔の美しい鉄のレース越しに360度パリの眺望が眼下に広がり、とりわけ夜景が見事だ。 閑話休題。眺めのよいホテルは多々あれど、今、お薦めしたいのが、大規模な改装工事を終えて一昨年再オープンした老舗『リッツ・パリ』、同じく大改装を経て昨年生まれ変わった名門『オテル・ド・クリヨン』、そして、3年前にパリに誕生した知る人ぞ知る隠れ家ホテル『ラ・レゼルヴ・パリホテル&スパ』。それぞれの自慢の眺めを楽しみに、3軒のラグジュアリーホテルを訪ねよう。ラ・31『リッツ・パリ』の『サロン・プルースト』。華やかさと落ち着きが溶け合った優美な空間。中央には、マドレーヌやラング・ド・シャなど、フランス伝統菓子が並び、アフタヌーンティーに訪れるゲストを迎える。

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