SIGNATURE 2018年 6月号
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パ堂リのと中し心たヴにァ広ンがドる、ー美ムし広く場威。そ風の堂歴史は18世紀初頭まで遡り、オスマンによるパリ大改造が行われた後、1893年に『ブシュロン』が移転してきたのを皮切りに、『ショーメ』、『ヴァンクリーフ&アーペル』などもこの広場に居を構え、広場はパリきってのラグジュアリーエリアに。そして1898年6月、この広場に『リッツ・パリ』がオープンした。 ホテル王と呼ばれヨーロッパ各国に超一流のホテルを誕生させたセザール・リッツ。『リッツ・パリ』は、各部屋に、電気、電話、浴室を備えたヨーロッパ初のホテルだった。ラグジュアリーに創意工夫を重ねたホテルはすぐさまヨーロッパ中の王侯貴族に愛され、世界中にその名が広まった。 2012年8月に、大改装のため全館クローズ。4年近くの時を経て、2016年6月に待望のリニューアルオープンを果たした。かつての『リッツ・パリ』を愛した人は期待と不安に胸をドキドキさせながら、新たにこのホテルと出合う人は大きな好奇心で胸をふくらませ、リッツ・ブルーの制服に身を包んだドアマンの笑顔に導かれて、その扉をくぐる。 案内された部屋は、このホテルに長く滞在した、ココ・シャネルの名を冠したスイートルーム。シャネルの現デザイナー、カール・ラガーフェルドも参加した内装は、ホワイト・ブラック・ゴールドがエレガントな色彩を織りなす、高い美意識に満ちた空間。窓を開ければヴァンドーム広場が一望の下に。このホテルを愛したクチュリエに想いを馳せつつ、極上の景色を満喫したい。 『リッツ・パリ』は、多くの芸術家の琴線を揺らしたホテルだ。『サロン・プルースト』は、その名のとおり、文豪マルセル・プルーストへのオマージュ。図書室風の典雅な造りのサロンでは、プルーストのアイコンであるマドレーヌをはじめとする、フランスの伝統菓子で構成した優雅なアフタヌーンティーを楽しめる。サロンに向かって右奥が、プルーストの定席。『失われた時を求めて』が執筆されたその場所で、プチット・マドレーヌをお茶に浸せば、想いは〝スワン家のほうへ〞と、はるか時空を超えてゆく。 そもそも『リッツ・パリ』は、セザール・リッツが、近代フランス料理の生みの親、オーギュスト・エスコフィエと組んで仕掛けたホテルで、食のクオリティの高さは伝統だ。メインダイニング『ラ・ターブル・ド・レスパドン』では、ミシュラン2つ星を得た、伝統と革新を見事に融合させたフランス料理を、華やかな空間と極上のサービスに包まれながら満喫できる。 そして、ホテルの一番奥にひっそり看板を掲げているのが、『バー・ヘミングウェイ』。アーネスト・ヘミングウェイに愛された伝説のバーだ。くぐもった喧騒が漏れてくる重たいドアを開けると、まるで、映画『ミッドナイト・イン・パリ』の主人公になったようなゆかり34La Place Vendômeココ・シャネルの名をつけたスイートルームは、とりわけ人気が高い。エントランスには、ラガーフェルドによる『リッツ・パリ』のデッサンが飾られ、部屋の調度品も、シャネル所縁のものが置かれている。Ritz Paris

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