SIGNATURE 2018年 6月号
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行列店のような看板メニューだからそれはやっぱり、通うしかない。ちょっと船上まで、ねに快適。 スイートルームに無償で提供される朝食のルームサービスの撮影を行った時のことである。プレゼンテーションを一新するということで、その日が初めてのセッティングと相成ったのだが。「やっぱりこの小皿でよかったですよね」「トレイにしたほうが、安定感が出ている」「あれ、小皿はこのサイズでよかったんでしたっけ?」。関連部署の担当者が行ったり来たり。正直、「どっちだったか」と並べられた小皿のサイズがどう快適さにつながるのか、撮影側には判別不能なレベル。けれど、その一場面が、歯ブラシひとつ、スリッパの履き心地にすら同じ過程を経てきたことが見て取れ、「飛鳥Ⅱ」の積み重ねてきた修練の時間に軽く眩暈がしそうだった。スイートルームの乗客が、何の気なしにオーダーしたルームサービスの朝食は、ただ美しく、何となく食べやすい気がすることだろう。けれどその「何だか快適」を絶対的につくり上げるために、「飛鳥Ⅱ」は嬉々として時を費やしてきたのである。裏切らない信頼は、派手な仕掛けより、むしろ愛着という〝糊代〞に変わる。 そして、この船における食は、まさに胃袋を鷲掴みなのである。静岡産の白イチゴとジャージー牛乳を使用したジェラートの上品な酸味と甘さ。バー『マリナーズ・クラブ』では、オリジナルのカレー味とオリーブオイル味のおかきが隠れた人気を誇っている。『日本郵船』の客船らしく、『リドグリル』のりしろわしづかめまい『ピアノ・バー』『シガー・バー』など、大人の夜の居場所は確保されている船だが、じっくり落ち着いて飲む夜なら、メインバーの『マリナーズクラブ』がいい。つまみのカレー味、オリーブオイル味のおかきが、じわじわとクセになる。「オリジナルカクテル飛鳥」(1,080円/税込)51朝・晩の食事は基本的にメインダイニング『フォーシーズンズ・ダイニングルーム』で。本格フレンチから趣向を凝らした和食まで、胃袋を飽きさせることがない。ロイヤルスイート、アスカスイートのゲストは、夕食を限られたゲストだけで楽しむプライベートな空間、『プレゴ』でとることも可能。

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