SIGNATURE 2018 7月号
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Kura 多様な食文化がせめぎ合うニューヨーク。寿司やラーメンがこの街で市民権を得たように、日本酒もまた同様にその広がりを見せている。  そんな中、ニューヨーク初の本格的酒蔵『ブルックリン蔵』(Brookyn ブルックリン区サンセットパーク。「インダストリー・シティ」という複合施設群にリノベートされた、かつての工業地帯の一角にある。)が昨年秋に誕生した。場所は 創業者はブライアン・ポレンさんとブランドン・ドーガンさん。日本酒との出合いは5年前の日本。友人の結婚式で口にした日本酒に、二人はあっという間に虜になった。その後、酒蔵を巡り、日本酒への想いを抱えたまま帰国。いつしか「国産の原料で自国の食文化に合う日本酒を造りたい」と夢見るようになった。 仕事を辞め、この地を拠点に夢実現の第一歩を踏み出したのは2016年のこと。経営は金融業界出身のポレンさんが、酒造りは元・医学研究所の薬品開発者だったドーガンさんが管理することになった。さまざまな米と麹を集めては実験を繰り返し、これぞという原料を選び出した。米はカリフォルニア産のカルローズ米( * ) とアーカンソー州産山田錦。水は北部キャッツキル山地からの天然水。麹だけは日本の酒蔵から分けてもらったものを用いている。 醸造機材の調達には苦労した。なにせここでは日本酒造りはマイナービジネスだ。ビールなどと異なり専用機材はほとんど流通していない。「それならば」と、ドーガンさんは蒸し器と麹室を自力でつくり上げた。 やがて酒が完成し、3月にはタップルームも落成。仕事帰りの若者たちがカウンターでグラスを傾け、この珍しい地酒を愉しんでいく。「目指すはBBQに合う地酒です」。二人が声をそろえる。なるほど、彼らの日本酒はどれも香り高く、アメリカアメリカの食に合う、日本酒造りをめざしてlタップルーム30文・小川佳世子 写真・ナカムラゴウ上:蔵元のブライアン・ポレンさん(左)と杜氏のブランドン・ドーガンさん(右)。 ニューヨークにふさわしい日本酒造りに取り組んでいる。 右下:機材調達の壁もなんのその。 麹室もDIYで。 中:こだわりの米国産米。 左:自家製蒸し器にあしらわれたNASAのロゴはあくまでジョーク。Text by Kayoko OGAWA Photographs by Go NAKAMURABrian POLEN & Brandon DOUGHAN, Brewer OwnerBrooklyn KURAブライアン・ポレン&ブランドン・ドーガンニューヨーク初の本格的“酒蔵”New York

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