きめきもとが異なり、想像を超える多様性がある。それが日本酒の素晴らしさ。ワインにはない魅力です」。 グレッグさんはしかし、フランスに到着したばかりの若山さんと蔵人を近隣のワイナリーに連れて行き、地元のワインを飲ませた。「わざわざ日本国外で日本酒を醸すなら、それなりの意味や価値が必要なはず」。 では〝フランスの日本酒らしさ〞とは何なのか? その答えは「造る環境に合った酒を造る」ことではないかとグレッグさんは考えた。 やがて若山さんはフランスに暮らしながら、いかにチーズやパンが日日人を幸せにするかを知る。「人が発酵(=微生物の営み)に関わるのは人に幸せをもたらすため、そこに〝取りに行くべきもの〞があるからではないか? 任せるところは微生物=酵母の発酵に任せる。しかし酵母の環境を整えることは酵母自身にはできない。それは人の仕事。だからそこに関わる意味がある」。 こうして『昇涙酒造』から4種の日本酒が誕生した。いずれもワインにも匹敵するボディ(感触)があり、味わいに幅がある。さらに繊細さ、肌理の細かさ、心地よい余韻をともなう純米酒である。昨年仕込んだ酵母無添加の生酛は、来春のリリースを目指し熟成中という。やがて「蔵の味」と呼べるものが生まれるまで、二人は発酵と対峙しながら、この蔵で酒を醸し続けてゆく。グレッグさんは1982年、 アヌシー生まれ。 大学で法律を専攻。 医療機器メーカー、 料理人、 バーテンダーを経て、 2017年『昇涙酒造』を設立。 KURAMOTOを名乗る。 若山さんは1971年、 福岡県出身。 学生時代から自然農法に興味を持つ。 『酔鯨』『竹鶴』など、 主に西日本の酒蔵で蔵人を務め、 2016年12月渡仏、 『昇涙酒造』杜氏に就任。35左から:まろやかでフェミニンな味わいの「暁」は冷酒で。大吟醸「風」はドライフルーツを思わせる繊細な香り。「浪」は森の下草やキノコのようなアロマを持ち、チーズと合う。「雷」は熟成感のあるフルボディ。ナッティな香りで、燗に向いている。使用米:(第1期)鳥取県産玉栄、兵庫県産山田錦 (第2期)鳥取県産山田錦、岡山県産雄町、 福井県産五百万石、鳥取県産玉栄酵母:日本醸造協会酵母仕込み水:中硬水、軟水(山からの湧水)銘柄:「暁」「浪」(純米酒、玉栄70%)「風」(純米吟醸、山田錦50% ) 「雷」(純米酒、玉栄80% )*2018年秋、日本発売予定お問い合わせ:酒のはしもと 電話047-466-5732Kenichiro WAKAYAMA, Toji - Chief BrewerLes larmes du levant昇涙酒造4 Rue du Regrillon, 42410 Pélussin, FranceTel:+33 6 58 80 22 60http://www.larmesdulevant.comGrégoire BOEUF, KuramotoKohei TANAKA, Brewer杜氏若山健一郎蔵元グレゴワール・ブッフ蔵人田中光平
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