SIGNATURE 2018 7月号
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567 にむらじゅんこ|ライター、翻訳家、比較文学研究者、1児の母。長年のフランス暮らし、モロッコ通い、上海暮らしなどを経て、現在、鹿児島大学講師。著書に『クスクスの謎』(平凡社新書)、近著には『海賊史観からみた世界史の再構築――交易と情報流通の現在を問い直す』(稲賀繁美編、思文閣出版、共著)などがある。し葡萄などをちらせていただくと美味。ヤ  ヤンススミンーちンゃんでのスマヤマはス、ヤコリック(原因不明の黄昏泣き)対策として、ヤンスーン(Yansoon)というアニスシードとキャラウェイシードをミックスしたハーブティーを彼女に用意している。ママいわく、「胃腸の消化を助け、腹痛を防ぐ」ということだ。このヤンスーンは、エジプトやレバノンで古くから伝わる、赤ちゃんから大人までもがリラックスして安眠できるという飲料だ。砂糖を加えずとも、アニス独特の甘みがあり、ハーブキャンディを食べた後のように喉が潤って、リラックスできる清涼感がある。パピルスに記されたエジプト最古の医薬書にも登場するアニス。古代エジプトの時代からミイラ作りの浄化に用いられてきただけに、物理的な浄化だけでなく、スピリチュアルな「清め」の役目も担っている。邪気をはらい、悪夢を遠ざけ、瞑想のインセンスとしても地中海で広く使われてきた。また、アニスは、母乳の出を促進するとも民間で信じられている。だが、過ぎたるは及ばざるが如し。アニスに含まれるアネトールの過剰摂取は、赤ちゃんにもママにもよくないので、ガブ飲みはご法度。適量のヤンスーンで、ママもリラックスして、ヤスミンちゃんもいい夢を見ながらぐっすり眠ってくれますように。Photos by Benoit DUPUIS1. おすわりが上手になって、座位でお食事。2. モロヘイヤ専用庖丁「マハラタ」で、ネバネバみじん切りも楽々。3. モロヘイヤのスープを混ぜたお粥。4. お米入り牛乳プリン「ロズビラバン」。5. ヤンスーンを淹れるママ。6. エジプトの台所に欠かせないアニスとキャラウェイシード。7. ヤンスーンを飲むヤスミンちゃん。45number41EGYPT

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