SIGNATURE 2018 7月号
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想いを託す遺贈寄付という選択「」 「聞き慣れない言葉だな」――〝遺 「遺贈寄付とは、個人が遺言によっ 「さまざまな団体や機関が実施する贈寄付〞に対し、そんな印象を持つ人は少なくないかもしれない。て遺産の全部、または一部を社会貢献団体や大学、その他の団体や機関などに寄付することをいいます。寄付先の公益性によって税制上の取り扱いが異なります」と説明するのは、三井住友信託銀行個人企画部企画チーム主任調査役の田村直史さんだ。アンケート調査を目にしますが、いずれの調査においても、何割かの方々が、『遺産の一部を寄付したい』、あるいは『遺産の寄付に関心がある』とご回答されており、遺贈寄付には一定の社会的ニーズがあると認識しています」 遺贈寄付の広がりには、配偶者や子供、親兄弟など、法定相続人がいないケースが増えているという社会的背景もある。 「相続人の不存在により遺産が国庫に帰属するケースは、年間約400億円にも上っています。遺産の使い道を国に委ねるのも立派な選択肢ですが、遺贈寄付には、ご自身が応援したい団体を直接支援できるというメリットがあります。遺贈寄付の広がりは、選択肢となる各種団体の情報開示の促進や充実にもつながり、社会全体にとっても望ましいことでしょう」 もちろん、寄付をするなら生前に行うという方法もある。 「生前寄付も遺贈寄付も、経済行為としては大きな違いはありません。ただ遺贈寄付の場合は、相続人へ一定額の配分を行った残りの金額を遺贈する、といった工夫も可能なため、無理のない範囲で寄付することができます。また、これは個人的な感想ですが、ご自身の死後に生前の篤志が明らかとなる遺贈寄付には〝粋〞な印象もあります。誤解なきよう付言しますが、生前寄付も立派な行為であることに変わりはなく、こちらは寄付後に寄付先の活動状況を確認していけるというメリットがあります」 では実際に、遺贈寄付を自分が望むとおりのかたちで実現するためには、どのように進めていけばいいのだろうか。写真・大志摩徹、石塚定人(ポートレート) 文・小澤啓司一生涯をかけて築いてきた財産。その承継先はほとんどの場合、法定の相続人だ。だが近年、遺産を社会貢献のために役立てたいと考える人が増えている。その手段の一つが遺言による「遺贈寄付」だ。社会貢献団体や大学、その他の団体や機関などに遺産の一部を寄付することで、こうあってほしい未来への想いを託していく。「遺贈寄付」による社会貢献60万年筆:マイスターシュテュック 149 お問い合わせ:モンブラン コンタクトセンター 0120-39-4810 www.montblanc.comたむら ただし|1981年生まれ。 三井住友信託銀行 個人企画部 主任調査役。 2003年入行後、 業務部、 経営企画部、 プライベートバンキング部を経て、 現職では個人向け事業施策全般を担当。 主な著作に『家族信託をもちいた財産の管理・承継』(共著、 清文社)、 『信託の理論と実務入門』(共著、 日本加除出版)などがある。Tadashi TAMURAPhotograph byToru OSHIMA & Sadato ISHIZUKAText byKeiji OZAWA田村直史

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