SIGNATURE 2018 7月号
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「第一に、行動することが大切です。 「金銭はどんな団体からも歓迎され遺贈寄付をされた方は、これまでお世話になった団体や、活動に参加した団体を選択される場合が多いようにお見受けしますが、各種団体の開示情報を調査して候補を選定されるケースもあるようです。冒頭に触れたアンケートでは、何割かの方が遺贈寄付に関心を示されていますが、実際に遺贈寄付まで至る方はまだ少なく、微増傾向というのが現状です。興味を持った団体があれば、活動に参加したり、問い合わせをしてみたり、とにかく接触してみることが良策です。また、弊社のような信託銀行にご相談いただければ、さまざまな団体と提携を結んでいますので、ご希望の分野の候補先をいくつかお示しすることも可能です」 遺贈する財産の形状については、遺贈先団体の都合を聞いておくとよいだろう。ます。株式や債券などの有価証券は、市場に上場しているなど売買しやすいものなら受け入れてもらえる可能性があります。絵画や不動産は考えもの。とくに不動産は、管理するのに手間も費用もかかります。よほどニーズと合致しない限り〝ありがた迷惑〞となりかねません」 次にやるべきは、遺贈寄付が滞りなく実行されるよう手続きを進めることだ。 「ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの遺言によって創設されました。しかしその拠り所となる〝遺言〞は判然としない部分も多く、親族との争いによって執行は難航したそうです。現代も特に自筆の遺言は争いや無効となる場合があり、注意が必要です」 きちんとした「遺言」が作成されていなければ、絵に描いた餅で終わってしまうこともあるわけだ。 「さらに、遺言が法的要件を満たし明確なものであったとしても、それが実行されなければ意味をなしません。そこで重要となるのが『遺言執行者』の指定です。未成年者や破産者以外の〝信頼できる〞方なら、どなたに依頼してもかまいません」 とはいえ、遺言書作成や遺言執行者の指定をするなら、できるだけ法律や実務処理に精通した専門家を頼りたいところ。すぐに思い浮かぶのは弁護士など法律の専門家だが、着実な業務執行や長期にわたる事業の継続性という観点からすれば、法人であり、財務基盤や組織体制が強固な「信託銀行」の存在を見逃すことはできない。 「信託銀行が取り扱う『遺言信託』は、公正証書遺言の作成から、遺言書の保管管理、相続人への遺言書内容の開示、そして遺言執行までトータルにサポートしており、遺贈寄付を着実に実現する〝器〞として活用いただけます」 可能であれば、法定相続人の理解を得たうえでの遺贈寄付が望ましい。 「もちろん遺贈寄付は相続人に知らせなくても準備できます。しかし、特に大きな金額を遺贈寄付するような場合には、相続人と寄付先との間で争いとなるおそれもあります。反対に、生前からどのような考えで遺贈寄付をするのか相続人の理解を得ておけば、その考え自体があたかも〝家訓〞のように子孫へ引き継がれていくことも期待されます」 ところで、仰々しく遺言まで書いて、遺贈として寄付するとなると、大きな金額でなければ恥ずかしいと思う人もいるかもしれない。しかし田村さんは「それはまったくの杞憂です。どんなに少額でも喜んで受け取ってもらえ、皆さまの未来への想いが寄付先に伝わります」と教えてくれた。遺贈寄付を実現するには「遺言信託」という サポート61

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