ただつぐ ITIきざけずさん 「SAKEえた。「年を追うごとに酒質が向上している」と審査員が口を揃えたように、審査基準もよりシビアになってきている。予審・決審ともに多くを唎き酒した『みいの寿』の井上宰継さんは、その難しさについて、「数をこなさないと酒を唎けるようになれません。私も最初は100点も唎けなかった。数百をこなせるようになったのは、この会や鑑評会で唎き酒をさせていただけているから。慣れてくると引き出しがどんどん増えて、不思議と違いがわかってきます。さらに、自分の舌のチェックにも。自分の評価と、他の審査員との答え合わせで、自分の評価が間違っていないことに気づけます」。 引き出しが増えると、自分の酒造りに活かせるメリットもあるが、出品酒と自分の好みを分けて考えなければならない難しさもある。『宝剣酒造』の杜氏・土井鉄也さんは、「昨年くらいから甘さを少し控えた、キレイな甘さのお酒が目立ち始めました。以前なら食中酒としては疑問符がつくものが多かったのですが、唎き酒もよし、飲み込んでもよしの、長く楽しめるお酒が上位にきています」と、レベルが伯仲している現状を語ってくれた。 実行委員長の長谷川浩一氏は、今年から審査された海外出品酒部門で来日したアメリカ・オレゴン州の蔵元と熱心に意見交換。「蔵元を連れてオレゴンに伺います」と約束する姿が印象的だった。世COMPETON」も7回を数界における日本酒の注目度の高まりは年を追うごとに熱くなっているようだ。 ダイナースクラブが協賛する「若手奨励賞」には『蔵王酒造』の杜氏・大滝真也さんが選出された。蔵王酒造は宮城県白石市に明治6年に創業した蔵。長く南部杜氏の下で酒造りを行ってきたが、2年前から生え抜きの一級酒造技能士の大滝さんが日本酒造りを先導してきた。まだ31歳という超がつく若手だ。 「まさか自分がこんな賞をいただけるとはびっくりです。うちのお酒は基本的に地元メインで出している商品です。日本中の銘酒と並んで、うちの酒がどう評価をされるのかと、去年から出品していますが、まさか2年目で3位とは。蔵人全員での取り組みが、まったく別方向でなかったことを示せたのはよかったです」 大滝さんは平成25年度に手がけた、特別純米酒「インスピレーション」が各方面から賞賛され、実家に戻ってきた蔵元の渡邊毅一郎さんと蔵王酒造の両輪をなす。 「うちの蔵は震災以降ガラッと酒造りを変えました。以前は管理も杜撰でしたし、社員がそこまで意識が高くありませんでした。そのタイミングで自分を教えてくださった杜氏に代わり、酒造りや管理もしっかり教えていただいて、震災前と後では酒質がまるで違います。まだまだ課題ばかりですが、その途上ながらこのような賞をいただけたので、さらに身を引き締めて頑張ろうと思います」レベルアップで伯仲する日本酒の現状見据えるもの46右上から反時計回りに:〈スパークリング部門〉の唎き酒をする実行委員長の『株式会社はせがわ酒店』代表・長谷川浩一氏。/2018年から新設された〈海外出品酒部門〉の蔵元の一人、カナダ・オンタリオから訪れたケン・ヴァルヴァー氏。/〈ラベルデザイン部門〉の審査ディスプレー。昨年のジャポニズムを意識した過剰なデザインは影を潜め、よりすっきりしたものが目立った。/予審会と決審会はブラインドテイスティングで行われる(一般非公開)。「純米酒」「純米吟醸」「純米大吟醸」「吟醸」の主要4部門は、予審の段階で出品数の3割程度にまで絞られ決審へと進む。/予審・決審を通した審査に臨む『株式会社みいの寿』専務・井上宰継氏(手前)と『宝剣酒造』の専務取締役兼杜氏の土井鉄也氏。唎き酒は1時間に百数十種ほど、もっとも速い人で200種ほどを唎くのだそうだ。/表彰式に続いて『ザ・ペニンシュラ東京』24階のレストラン『Peter』で行われた授賞パーティ。ブッフェスタイルで上位入賞酒の試飲を楽しんだ。31歳の若き杜氏が
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